著者
池田 俊也 山田 ゆかり 池上 直己
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.27-38, 2000-12-15 (Released:2012-11-27)
参考文献数
31
被引用文献数
3 2

抗痴呆薬ドネペジルの経済的価値を評緬するため,マルコフモデルを用いて,軽度・中等度アルツハイマー型痴呆患者に対するドネペジル治療の費用-効果分析を実施した。分析の立場は支払い者の立場とし,費用は診療報酬点数および介護保険における在宅の給付限度額を参考に推計した。薬剤の有効性データは国内臨床第III相試験の成績を基にしたが,わが国における自然予後のデータは入手できなかったため米国の疫学データを用いた。薬剤の有効性,自然予後ならびに各病態における平均QOLスコアを組み合わせて質調整生存年(QALY)を算出し, 効果指標とした。2年間を時間地平とした分析では,軽度・中等度アルッハイマー型痴呆患者に対するドネペジルの投与により,既存治療に比べて患者の健康結果が向上するとともに,医療・介護費用が節減されることが明らかとなった。但し,ドネペジルの長期的効果やわが国におけるアルッハイマー型痴呆患者の予後に関するデータが不充分であることから,今後,これらのデータが蓄積された際には本分析結果の再評価を行うことが望ましいと考えられる。
著者
関川 靖 山田 ゆかり 吉田 洋
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.119-127, 2011-03-31

2000年代にはいっても地域経済は疲弊しており,各地域では地域振興のために地域ブランド食品を開発し販路拡大を模索している.現状において,B1グランプリは販路拡大戦略として有効な手段であるという結果が出ている.しかし,継続的な地域振興を考えたときには問題点がある.販路拡大による継続的な地域振興を図るためには,大学との連携や地域ブランド食品の輸出という2つの新たな手段が必要と思われる.本稿では,この2つの手段の現状とその効果,および導入可能性を考察した.
著者
山田 ゆかり
出版者
名古屋文理大学短期大学部
雑誌
名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.19-26, 1995-04-01

山田(1989)は, 小学校5年生, 中学校, 高校, 大学の各2年生の4群の20答法における自己記述を, 自己のあり方の内容面と構造面を分析するための2種類のカテゴリーを用いて分析し, correspondence analysisの手法を用いた多変量解析を適用して, 青年期における加齢にともなう自己記述傾向の変化について検討した.本研究では, その変化の様相をさらに具体的に検討するため, 記述順位を考慮した場合での, 個々の分析カテゴリーの記述傾向を手がかりとして検討した.その結果, 加齢にともなう自己記述傾向の変化の詳細な様相について, 具体的に明らかにすることができた.しかし全体としては, 記述の内容・構造のいずれの面においても, またいずれの年齢段階においても, 記述順位によって記述傾向に顕著に異なる特徴が認められるというよりは, 山田(1989)において全記述順位を一括して処理した結果に基づいて指摘された, 加齢にともなう自己記述傾向の変化にそのまま対応する特徴が, 記述順位の全般にわたってあらわれていることが認められた.
著者
山田 ゆかり 天野 寛
出版者
名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.3-12, 2002-04-01

近年,不登校,ひきこもり,校内暴力などの学校不適応を中心とする青年期の心理的適応問題の増加が指摘されている.大学生においてもこれは例外でなく,自己不確実感や不全感を抱え,友人ができない,うまくコミュニケーションがとれない,学内での居場所を見つけられないなど,大学生活への適応に大きな困難を抱える学生が増えてきている.大学としても,学生の心理的適応にこれまでになく配慮を必要とする局面となってきているのである.こうした問題意識を背景として,大学生の適応性に目を向け,自画像を用いて自己意識のあり方と適応性の関連性について検討することを意図した.本稿ではまず,大学生の自画像について分類を行い,描画に現れる特徴について検討した.その結果,自画像は,全体的な印象,顔の表情,特異な表現や不自然な表現,詳細さ,描画全体のバランスなどから,不適応状態から何らかの行動化の可能性が指摘されるA群,抑うつ的傾向が指摘されるD群,適応状態にあることが示唆されるN群,分類不能群の4群に分類された.また,A群,D群,N群別に,日常生活行動における適応性の1つの指標として学業成績との関連性を検討したところ,3群間で大きな差のあることが認められた.さらに,3群の自画像の描画には明らかに異なる特徴のあることが指摘され,自画像から適応性を査定することの妥当性が示唆された.