- 著者
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金山 智子
- 出版者
- 上智大学
- 雑誌
- アメリカ・カナダ研究 (ISSN:09148035)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.83-113, 2004-03-31
本論文は公的扶助受給者の報道におけるメディアの役割を、メディアの儀礼的視点から考察したものである。本研究では、ニクソンからクリントン政権までの27年間にわたって米国の代表的な雑誌で報道された公的扶助関連記事について内容分析を行った。その結果、これらの報道は定期的な儀礼としての機能を帯びていることが認められ、米国に存在してきた「貧困は罪深い」という共通の信念を読者が確認する機会となっていたことが示唆された。このような信念は17世紀のイギリス社会で発生し、その伝統を引き継ぐ米国社会にも受け継がれてきたことは明らかであり、また公的扶助の受益者についての報道を読者が、習慣的かつ、儀礼的に消費する際に影響を与えていたと理解できる。公的扶助の受益者たちと社会への貢献者としての納税者という二つの異なる立場は、報道を通じて、両者間が調和されるよりは、むしろ納税者の公的扶助受給者に対する敵意を強調することになった。米国では植民地時代同様、近代においても貧困者に対する「辱め」や「卑しさ」の観念が、メディアを通じた儀礼によって継続的に示されてきたのである。