著者
梶原 景昭
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-37, 1995

フィリピン社会に、今日でもきわめて強い浸透力をもつフォークロアが存在する。それは太平洋戦争中、旧日本軍が戦争遂行のための財貨をフィリピン国内に隠匿し、現在でもまだ埋まっているというものである。戦争末期に山下奉文大将がフィリピン方面軍司令官として着任し、その後降伏したこともあって、この隠された財貨は「山下財宝」と総称されている。この覚書は、今日でも人びとがうわさし、実際に財宝を求めて探索を続けている「山下財宝」伝説を、フィリピン社会・文化の文脈のなかで位置づけ、戦後五〇年にわたる変化の軌跡についてもあわせて検討するものである。この伝説のありようは、フィリピン人の世界観、歴史的背景、対外関係、富の概念、経済の状況、国家のあり方、政治権力の性格などを、多層的に映し出している。なお本稿を書くにあたり、平成六年度文部省海外学術調査「異文化共存の可能性」(代表 青木保) に関わる実地調査に負うている。ここに感謝を示したい。

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