終戦直後文部省は,占領軍総司令部のもとで戦時下教育の一掃に力を注いでいた.占領軍総司令部は,アメリカの教育専門家をスタッフとしてその目的のために民間情報教育局(The Civil Information and Education Section:略称CIE)を置いた.木田先生は,昭和21年に文部省に入省された.この時期に若手文部官僚として教科書局調査課に在籍し,CIEスタッフとともに社会科特別教科書『民主主義(上)(下)』の編集に係わった.この教科書は昭和23年から24年にかけて発行され,昭和28年頃まで使われ,戦後の民主主義教育に大きな役割を果たした.本稿では,木田宏先生の二編のオーラルヒストリーをもとに,木田先生と教科書「民主主義(上)(下)」との係わりについて,執筆の経緯,教科書に漫画を掲載したこと,執筆者について,大江健三郎のこと,共産主義の取り扱いの各項目で考察した.