- 著者
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武蔵 勝宏
- 出版者
- 同志社大学
- 雑誌
- 同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, no.1, pp.105-121, 2005-12
研究(Note)2003年5月、国連安全保障理事会は、イラク戦争後のイラク復興支援に貢献することを加盟各国に要請する決議1483号を全会一致で採択した。日本政府は、米英によるイラク武力行使とそれに引き続く事態をイラク特別事態と位置づけ、日本の「主体的」な判断から、イラクでの人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うため、イラク人道復興支援特措法案を国会に提出した。これに対し、野党は、イラク戦争の正当性、占領行政への協力と交戦権、自衛隊派遣の現地のニーズ、非戦闘地域の判断の困難さ、安全確保と武器使用基準、武器・弾薬の陸上輸送、国会の関与の限定性などについて、政府の立場を批判した。国会での審議・決定過程では、民主党から自衛隊の派遣を法案から削除する修正案が提出され、政府与党との論戦が展開された。最終的には、与党が衆参両院を多数決で押し切り、実質的な戦闘状態が継続されているイラクに陸上部隊を派遣するという従来の自衛隊の海外派遣をこえる立法が成立した。法律の実施段階では、立法段階で積み残された矛盾点が顕在化し、安全確保の観点から、実際の派遣部隊の活動は現地のニーズに十分に対応し得ない限定されたものとなった。イラクでは、2004年6月にイラク暫定政府への主権移譲が行われ、自衛隊の活動は、実質的に多国籍軍の下で展開されるようになった。こうした変化を受け、政府与党内では、自衛隊の海外派遣を本来業務に位置づけ、事態対処的な特措法を恒久法として統一化する動きがある。恒久法を検討する際には、国連決議の有無や受け入れ国の同意、非戦闘地域や安全確保の要件などの派遣条件や、後方支援が認められる活動内容の範囲を合憲性と政策的合理性の観点から明確化し、国会の関与についても、事前承認を原則とし、国会への定期的な情報提供と国会に派遣中止決議権を付与することが考慮されるべきであろう。