著者
松本 茂章
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.203-218, 2005-12

研究(Note)80 年代から90 年代初めにかけて、全国の自治体は競うように文化会館や文化ホールを建設した。政府による内需拡大の要求やバブル経済にともなう好景気などを背景に、「ハコモノ行政」が展開された。しかし、これらの施設は、海外や東京でつくられた芸術文化を紹介することにとどまりがちで、地域の芸術文化を創造し広めるという役割は、きわめて弱かった。東京の芸術文化を「上意下達」のスタイルで地域に伝えていく配給的機能は果たしたものの、地域文化育成にどれほど役立ったのかという疑問は、すでに多くの先行研究が指摘してきたところである。 上記の反省に加えて、依然として続く東京の経済文化両面の一極集中に対する強い危機感から、いくつかの自治体は近年、創造型の文化施設を設ける試みを始めた。地域アイデンティティの形成、回復を目指すことにより地域活性化を図る動きである。そのひとつの事例である京都芸術センターに注目してみた。 京都芸術センターは、京都市が2004 年4月に中京区内に開設した文化施設である。地方自治法上の「公の施設」ながら、特色ある運営システムを採用しているところが興味深い。その活動ぶりや運営実態を詳述することで、21 世紀の自治体文化政策を考える一助になると考えた。 本稿では、まず筆者の問題意識を明確にしたうえで、次に京都芸術センターの5年にわたる活動状況を振り返り、運営システムを解明していく。最後に、課題を整理して総括し、新時代の自治体文化政策のありようを浮かび上がらせる。

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