著者
荻野 達史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.311-329, 2006-09-30

「社会運動の今日的可能性」を探るために, 後期近代における「個人化」の趨勢に注意を向けた場合, 2つの問いが導かれる. (1) 個人化の状況は, 理論的にみて, いかなる社会的運動を要請しているのか (2) 経験的には, その要請に見合う運動が展開されているのか本稿はこれらの問いに答える試みである.<BR>第1の問いに対しては, 個人化に関する議論に, Honneth (1992=2003) の承認論を合わせて検討することで, Cornell (1998=2001) のいう「イマシナリーな領域」への取り組みが求められることを導き出す.すなわち, 自己アイデンティティの構築に重い負荷をかける個人化状況は, ときに著しく損壊した自己信頼の再構築と, 志向性としての「自己」を「再想像」するための時空間を創出する取り組みを要請するこの課題は, Giddens (1991=2005) のライフ・ポリティクスの議論でも十分に意識化されていないため, 本稿では "メタライフポリティクス" として定位した.<BR>第2の問いに対しては, 1980~90 年代以降に注目を集めるようになった「不登校」「ひきこもり」「ニート」といった「新たな社会問題群」に取り組んできた民間活動に照準した.とくにそれらの活動が構築してきた「居場所」の果たしている機能とそのための方法論を検討し, 理論的課題との整合性を確認した.また, 同時に運動研究史上の位置づけを明確にした

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