著者
大谷 尚
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.110-124, 2006

小論では、情報技術の教育利用に関して筆者が継続している質的研究を通した論考を示し、学習の場での観察的かつ理論的な研究の重要性を論じる。まず情報化に対応した教育政策の概観と、情報化社会に関する諸言説の検討を行う。その上で、技術の存在論的で現象学的な意味と意義について、ハイデッガーの『技術への問い』を通して検討する。これに基づき、情報技術の教育利用に関する著者自身の現象学的な質的研究について述べ、質的研究手法についても概観する。その後、総合的な学習の時間のインターネット利用での未習漢字の問題とその事例の検討を通して、近代文書化技術により形成されたカリキュラムや教授・学習文化の本質的特徴、また教師と学習者との不可視の権力構造に言及し、それらの脱構築の必要を論じる。最後に、情報技術の使用による人間発達への否定的影響と同時に、情報技術を通した人間の解放の事例と可能性についても触れ、教育学の課題を論じる。

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