- 著者
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千代原 亮一
- 出版者
- 大阪成蹊大学
- 雑誌
- 研究紀要 (ISSN:13489208)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.1, pp.213-223, 2006-03-25
インターネットに代表される情報通信技術の発達は、国民の表現の自由をめぐる状況に劇的な変化をもたらしたが、その反面、重大な社会問題を惹起している。特に近年、インターネット上での悪質な犯罪行為や違法行為が顕在化しており、その原因としてインターネットの匿名性が挙げられる。その為に政府は、「インターネット実名制」の導入を検討し始めているが、拙速な実名制の導入はインターネットの更なる発展を阻害するだけでなく、「自由で開かれた公開討論の場」としてのインターネットの機能を奪いかねない。日本国憲法第21条で保障された表現の自由の制度趣旨の一つとして、いわゆる「思想の自由市場」が論じられるが、仮にインターネットが、思想の自由市場ないし公開市場であるとするならば、インターネット上での言論に匿名性が担保されていることは、表現の自由の保障に大きく寄与することになる。