- 著者
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工藤 力男
- 出版者
- 成城大学
- 雑誌
- 成城文藝 (ISSN:02865718)
- 巻号頁・発行日
- vol.192, pp.14-36, 2005-09-15
コンピューター操作の場で使われたちまち広がった「立ちあげる」に違和感を抱く人が少なくない。違和感はこの動詞の<自動詞+他動詞>構造に由来するらしいことは早く指摘されたがその原理は説明されずにきた。筆者は近年の研究に学んで複合動詞全体を検討し<他動詞+自動詞>構造の複合動詞は多いが<自動詞+他動詞>構造の複合動詞は特殊な一部に限られることを明らかにした。<他+自>構造の動詞の多くは<自+他>構造の動詞からの派生で受動態による長い語形を避けて自動詞になったのである。後項が自動詞なら主格だけをとる一価動詞で充分だが他動詞は二価動詞なので「立ちあげる」は前後項間で意味がねじれて非文になるのである。