著者
小野 潔
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
シンポジウム
巻号頁・発行日
no.55, pp.13-22, 2006-03-13

1.日本の金融業ではこの10年間でデータマイニングが広く使われるようになった。金融業がデータマイニングを適用する分野は,与信審査,リスク解析,CRMの3分野である。特にモデル与信の分野ではデータマイニングが不可欠な存在になった。2.日本の中小企業はおよそ500万社存在するが,企業情報ベンダーが提供する格付やスコアは最大120万件,予測倒産率に至っては高々42万件にすぎない。評点は,調査員の主観も部分的に入る相対的な指標であるため,統計に基づく与信やポートフォリオ管理に利用しにくい。3.本研究は,企業情報ベンダーが提供する約42万件の予測倒産率から,倒産モデルを再構築(Re-Construct)することである。企業情報ベンダーの倒産モデルは未公開のため,モデルを再構築し,構造を推定することは中小企業の与信フレームを考えるうえで重要なことである。4.再構築(Re-Construct)アプローチによるモデル開発は,企業情報ベンダーから提供された倒産率を目的変数に,企業情報を説明変数とし,モデル構造を推定する方法である。ターゲットは予測倒産率χ%以上を負事例,χ%未満を正事例にする。再構築モデルを安定化するために,バギング学習により複数の決定木の平均値を予測倒産率とした。5.再構築モデルはCap50値が70%前後,倒産格付とのスピアマン相関が0.70であり,ビジネス利用に可能な精度を有した。この再構築モデルに企業情報を当てはめることで,中小企業約120万社の予測倒産率が得られた。今後は,中小企業の信用リスクの統計的コントロールへの応用が期待できる。

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