- 著者
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小渕 高志
- 出版者
- 東北文化学園大学
- 雑誌
- 保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.11-25, 2006-03-31
日本社会の近代化と脱近代化の過程を、われわれは観察できる。何が社会政策の発展に影響を与えたのか?その結果として、どのように福祉国家が発展していったのか?本稿では、これらの疑問に答えるために、日本の福祉国家の歴史を3つの時代に区切って考察している。第1の区分は、1920年代まで:"福祉国家前史"である。第2の区分は、1930年代から1950年代:"第2次世界大戦と福祉国家"である。第3の区分は、1960年代から1980年代:"福祉国家の進展と再編成"である。考察を進めるにつれ、工業化、社会の民主化、人口の高齢化、福祉多元主義(福祉国家から福祉社会への移行)といった社会政策の形成過程への影響が明らかになった。これら4つ観点から社会政策の形成過程への影響を、次のものに見ることができる。それらは、家族の多様化(世帯の縮小が社会保障を増大させる)、仕事の多様化(脱工業化は労働力の柔軟化を必要とする)、共同体の多様化(個人化)、ライフコースの多様化(晩婚・晩産は少子高齢化を招いた)である。これらの社会的な変化の結果、個人はそれまで所属していた集団から離脱し、家父長制から解放される。しかし、集団による保護を失い、社会的に排除される可能性もある。現代社会に生きるわれわれは、これらの社会変動にとても弱い。こうした社会変動は、既存の福祉国家に新しい課題を突きつける。新しい社会政策における21世紀型の福祉国家は、これらの新たな課題に応えていかなければならない。本稿は、社会政策の歴史から新しい課題を紐解くための社会学的考察である。