著者
二木 文明
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
no.17, pp.13-34, 2020-03-31

ウィリアム・インジ(1913-1973)は1950年代を中心に活躍した米国の作家であり、舞台劇『ピクニック』や映画『草原の輝き』の脚本などで知られる。60年代以降、ヒット作に恵まれず、劇作から小説へと軸足を移したが、いずれも不評で、最後の作品は出版を拒否された。彼は若い頃からうつとアルコール依存に陥り、また、同性愛者であったがそのことを恥じ、60歳で自ら命を絶った。インジの作品の主要なテーマは"現実を受け入れること"や"妥協"であると評されるが、これらは人生訓というよりも彼の性格に由来するのだろう。家族関係をみるならば、父親はセールスマンで一年のほとんどを留守にしていたため、インジは神経質で過保護な母親と14歳年上の兄の影響下で成長した。彼の性格傾向と同性愛は、主としてこの2人との心理力動的関係の中で培われたと考えられる。インジにあっては、作家の道を選ぶ以外、性格に由来する生きづらさと同性愛の苦悩から逃れるすべはなかったこと、しかし、創作能力が次第に衰退していったが故に自殺へと追い込まれてしまったことなどについて考察した。
著者
小玉 幸助 大竹 伸治 森谷 就慶 若林 真衣子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-8, 2018-03-31

2017年度に内閣府が公表した『平成29年版子供・若者白書』によると、不登校児童・生徒数は、小中学生で12万5,991人、高校生は₄万9,563人であった。小中学生の不登校は増加傾向にある。不登校児童・生徒の解消には、学校と関係機関との連携が必要不可欠な状況であり、この役割を担うのがスクールソーシャルワーカー(以下、schoolsocial worker:SSW)である。SSWは小中学校および高等学校で導入されており、効果検証も行われてきている。しかしながら、スクールソーシャルワーク活用事業に関しては経済分析が行われておらず、経済効果が明らかにされていない。本研究では不登校児童・生徒解消数を公表する北海道、山形県、東京都、長野県、鳥取県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県(以下、₁都₁道₇県)の不登校児童・生徒を対象にSSWにおける経済効果を算出することを目的に、所得を中心に経済学的視点からシミュレーション分析を試みた。
著者
若林 真衣子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.27-35, 2016-03-31

アルコール依存症(以下、ア症)者への支援は,飲酒のコントロールを取り戻す「治癒」を目指すのではなく,断酒を継続しながら社会生活を続けていく「回復」を目指すためのものであり,ア症者の自助グループ(以下、SHG)では「仲間とともに行われる自己との向き合い」を通して行われる.本研究では,「回復」過程での変化の対象として自己意識(公的自己意識〔他者の目に映った自分自身への意識〕・私的自己意識〔自分自身の内省よりとらえた自己意識〕からなる)を取り上げた.自己意識に関する項目と属性に関する項目で構成した質問紙調査を,ア症専門治療機関のア症患者94名,ア症SHG会員280名の計374名に対し行った.その結果断酒期間が長くなるにつれ,公的自己意識が下がり, 再飲酒リスクが高いほど,公的自己意識が高くなる傾向がみられた.ア症者の回復には自己意識,特に公的自己意識の低減が関係している可能性が示唆された.
著者
黒沢 麻美
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-7, 2016-03-31

急速に進む高齢化により、老年人口の増加と、それに伴い要介護人口が増加している現状がある。一方、介護現場では介護職員の不足が深刻であり、2025年には約38万人の介護職員が不足するといわれている。1)本研究は、筆者が「介護職員のQOLが介護業務継続に及ぼす影響に関する研究」の中で調査した結果注2)から、さらに「個別生活満足感」と「個別職務満足感」に焦点を当て、介護職員の職務に関する実態を明らかにするとともに、離職意向と関連のある個別職務満足感と個別生活満足感の構成要素である因子構造を検討することを目的とした。本研究のデータは、S市所在の高齢者福祉施設に勤務する介護職員241人を対象とした調査から得ており、そのデータの中から「個別職務満足感」と「個別生活満足感」に焦点をあて、それぞれの背景因子を探るため、最尤法により、カイザー基準で因子分析を行った。結果、個別職務満足感は₄つの因子に分類でき、個別生活満足感は₅つの因子に分類することができた。また、職場退職意向・離職意向には職務条件・職務満足感のみならず、生活満足感も関わっていることが明らかとなった。従って、介護職員の離職を防止するには生活満足感を高めることが必要であることが示唆された。
著者
野﨑 瑞樹
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.9-17, 2016-03-31

地域住民による高齢者の見守りは,見守りとネットワークの目的や手段によって多様であり,専門職はそれぞれに合った支援をする必要がある。本論では東京都において見守り支援に関わっている地域包括支援センターと関連機関の専門職およびコミュニティソーシャルワーカー(CSW)にインタビューを行い,住民による見守り実現のための働きかけについて明らかにした。まず見守りネットワークについて,住民と専門職の関わり方から₃つのタイプ(個別の対象者支援,地域活動,拠点のネットワーク)に分類した。次に,働きかけの内容を野﨑(2014a)の項目と照合して整理した。その結果,個別対象者支援,キーパーソン支援,地域ネットワークづくりといった支援と,発見,課題,地域把握となった。このうちキーパーソン支援は対象者支援ネットワークと地域活動ネットワークのどちらでも行われており,専門職と本人を含む住民との協働によってミクロレベルとメゾレベルが連動する重要な接点になると考えられた。
著者
小玉 幸助 森谷 就慶
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.19-25, 2016-03-31

保育士国家資格を取得するためには、保育相談支援(以下、保育ソーシャルワーク)の必修科目を取得しなければいけない。保育ソーシャルワークでは保護者対応を中心に相談援助を図る科目であるが、最近では精神疾患や虐待への対応を保育士に求めている。保育ソーシャルワーク研究では、社会福祉援助技術あるいは保育士固有の相談援助技術などの主張がある。しかしながら、精神保健福祉援助技術に関する指摘がない。保護者支援をするうえで、精神的不健康な保護者を支援するならば、精神保健福祉援助技術の必要性は高い。結論、本研究では先行研究及び育児不安を抱く保護者の現状を調査し、精神保健福祉援助技術の重要性を考察していく。
著者
癸生川 義浩 郷右近 歩 野口 和人 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-94, 2004-03-31

本稿では、知的障害養護学校小学部で行われている"遊びの指導"について、実態と課題について明らかにすることを目的とした。教師を対象としたアンケート調査の結果から、1)知的障害養護学校の教員の多くは"遊びの指導"について必要性を感じていたこと、2)授業の計画立案時には昨年度の活動案を重視していたことが示された。知的障害養護学校における"遊びの指導"の授業内容と、就学前施設における調査結果との比較より、養護学校において就学前施設で行われている遊びとほぼ同じ内容の遊びが行われていたことが明らかにされた。加えて、養護学校においては、就学前に受けてきた指導についての把握が十分に行われないままに指導が行われていることが指摘された。これらの問題の背景として、就学前施設と養護学校間の情報の共有が十分ではないということが考えられた。
著者
板垣 直子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
no.17, pp.55-64, 2020-03-31

ソーシャルワーカー養成に欠かせない対人援助の技術習得の一つに、F.P.バイステックによる「ケースワークの原則」、通称「バイステックの7原則」があるが、介護福祉士、看護師、理学療法士、作業療法士はどのような理論を拠り所とし、どのような教材、授業実践で習得しているのだろうか。比較検討したところ、対人援助教育というより、コミュニケーション、アサーション、チームアプローチ教育に力を入れていることがわかった。しかし、5資格が対応するクライエントは共通していることも多いことから、今後、「バイステックの7原則」を含む対人援助教育を展開することの重要性が示唆された。
著者
畠山 温子 菊池 紀彦 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.215-227, 2008

本研究では、社会技能訓練における重症心身障害児(者)への応用の可能性について検討するために、発達障害児(者)に対し実施されてきた社会技能訓練及び社会技能訓練に関連した先行研究を整理した。特に、交通機関利用スキル及び買い物スキルに焦点を当て各々の活動内容を整理した上で、発達障害児(者)に対してスキル獲得訓練を実施する意義について議論することを目的とした。はじめに、社会技能訓練が目指したものについて注目したところ、社会技能訓練は社会参加あるいは社会的自立を目指した活動、生活空間の拡大を目指した活動の二点に大別された。次に、交通機関利用スキル及び買い物スキル獲得を目指した社会技能訓練に注目したところ、両者ともシミュレーション場面と実際場面を組み合わせた訓練がスキル獲得に有効であったこと、買い物スキルの獲得には環境側の要因が大きくかかわってくることが示された。以上より、発達障害児(者)にスキル獲得訓練を実施したことは発達障害児(者)が社会に参加する機会を提供することとなり、重症心身障害児(者)へも同様のことが当てはまる可能性が示唆された。今後は、個々人に必要とされるスキルを見極めることの必要性や先行研究を応用した新たな支援法略の検討が課題としてあげられた。
著者
小玉 幸助 大竹 伸治 森谷 就慶 若林 真衣子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.1-8, 2018-03-31

2017年度に内閣府が公表した『平成29年版子供・若者白書』によると、不登校児童・生徒数は、小中学生で12万5,991人、高校生は₄万9,563人であった。小中学生の不登校は増加傾向にある。不登校児童・生徒の解消には、学校と関係機関との連携が必要不可欠な状況であり、この役割を担うのがスクールソーシャルワーカー(以下、schoolsocial worker:SSW)である。SSWは小中学校および高等学校で導入されており、効果検証も行われてきている。しかしながら、スクールソーシャルワーク活用事業に関しては経済分析が行われておらず、経済効果が明らかにされていない。本研究では不登校児童・生徒解消数を公表する北海道、山形県、東京都、長野県、鳥取県、島根県、広島県、福岡県、佐賀県(以下、₁都₁道₇県)の不登校児童・生徒を対象にSSWにおける経済効果を算出することを目的に、所得を中心に経済学的視点からシミュレーション分析を試みた。
著者
板垣 直子
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.第17・18号合併号, pp.55-64, 2020-03-31

ソーシャルワーカー養成に欠かせない対人援助の技術習得の一つに、F.P.バイステックによる「ケースワークの原則」、通称「バイステックの7原則」があるが、介護福祉士、看護師、理学療法士、作業療法士はどのような理論を拠り所とし、どのような教材、授業実践で習得しているのだろうか。比較検討したところ、対人援助教育というより、コミュニケーション、アサーション、チームアプローチ教育に力を入れていることがわかった。しかし、5資格が対応するクライエントは共通していることも多いことから、今後、「バイステックの7原則」を含む対人援助教育を展開することの重要性が示唆された。
著者
佐藤 直由
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-33, 2003-03-31

本稿は、昭和20年代後半の山形県を事例に、青年団の社会福祉活動を検証した。山形県の青年団の活動は、選挙浄化運動、産業開発青年隊運動、社会福祉活動が三本柱であった。その中で社会福祉活動の活動プロセスや活動内容は、資料が整理されず、検証もされてこなかった。検証を行うための資料として、山形県社会福祉協議会が発行した広報誌『たすけあい』を主に利用し、活動の方針、活動の内容、活動の目的を考察した。さらに、社会福祉指定団の研究活動も考察した。山形県の青年団の活動方針は新しい社会の建設にあり、活動内容は農繁期の託児や苗代の消毒、被服補修といった生活に直結した活動であった。そして活動目的は人間的教養を高め、地域組織の連携を図ることに置かれた。社会福祉指定団の研究活動の一つは、地域問題の発見を促す社会問題地図の作成にあった。その結果、青年団の社会福祉活動は、地域生活の向上と民主化を進める実践であったことが明らかとなった。
著者
小渕 高志
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-25, 2006-03-31

日本社会の近代化と脱近代化の過程を、われわれは観察できる。何が社会政策の発展に影響を与えたのか?その結果として、どのように福祉国家が発展していったのか?本稿では、これらの疑問に答えるために、日本の福祉国家の歴史を3つの時代に区切って考察している。第1の区分は、1920年代まで:"福祉国家前史"である。第2の区分は、1930年代から1950年代:"第2次世界大戦と福祉国家"である。第3の区分は、1960年代から1980年代:"福祉国家の進展と再編成"である。考察を進めるにつれ、工業化、社会の民主化、人口の高齢化、福祉多元主義(福祉国家から福祉社会への移行)といった社会政策の形成過程への影響が明らかになった。これら4つ観点から社会政策の形成過程への影響を、次のものに見ることができる。それらは、家族の多様化(世帯の縮小が社会保障を増大させる)、仕事の多様化(脱工業化は労働力の柔軟化を必要とする)、共同体の多様化(個人化)、ライフコースの多様化(晩婚・晩産は少子高齢化を招いた)である。これらの社会的な変化の結果、個人はそれまで所属していた集団から離脱し、家父長制から解放される。しかし、集団による保護を失い、社会的に排除される可能性もある。現代社会に生きるわれわれは、これらの社会変動にとても弱い。こうした社会変動は、既存の福祉国家に新しい課題を突きつける。新しい社会政策における21世紀型の福祉国家は、これらの新たな課題に応えていかなければならない。本稿は、社会政策の歴史から新しい課題を紐解くための社会学的考察である。
著者
黒沢 麻美 佐藤 直由
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.11-20, 2017-03-31

本研究は、Y市における介護職員の仕事の満足度や生活の満足度を把握し、介護職員が介護業務を継続、離職意向を示すそれぞれの要因を明らかにすることと、S市の調査結果との比較を行うことで介護職員の離職防止の対応策を検討することを目的としてアンケート調査を実施した結果である。アンケート調査は平成26年に筆者がS市の介護職員に行った調査と同様の内容とした。その結果、介護職員が介護業務を継続する要因となり得る個別職務満足感と個別生活満足感の構成要素を明らかにすることができ、Y市はいずれも「人間関係」に関する要素、S市は「自分自身」に関する要素が重要視されている傾向が見られた。
著者
大沼 由香 伊藤 博義
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-46, 2003-03-31

介護福祉士は、高校卒から4年生大学卒までの養成施設や国家試験による多種多様な資格取得方法が認められているが、年間4〜5万人が有資格者となり、これまでの登録者数は約30万人である。このように多様な介護福祉士の専門性を一定水準に確保するためには、資質の向上が必須課題であるが、介護職種の低賃金・不安定雇用など、福祉労働者の待遇問題も大きな課題となっている。本研究の目的は、専門学校出身の若い介護福祉士の待遇と専門職性の満足度等を記名・記述調査し、問題点を整理し、課題の解決に向けて考察することである。調査結果から、専門職性と就労実態の満足度は相関関係にあることが推察される。なお、資質向上の課題として、1.介護福祉士自身の課題,2.職場で解決すべき課題,3.社会福祉事業自体の課題についても、若干の提言を行う。
著者
勅使河原 隆行 佐藤 弥生
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
no.6, pp.83-98, 2008-03-31

本研究では、在宅ケアサービスを行う介護福祉士の専門性を評価するための知識と技術には、何が求められているのかを解明することを目的として調査を行った。その調査を集計し、因子分析を行って在宅ケアサービスを行う介護福祉士に必要とされている専門性に関する項目を確定した。本研究において確定した項目は、(1)利用者との信頼関係を構築する知識・技術、(2)障害や疾病に関する知識・技術、(3)多職種間の協働に関する知識・技術、(4)状況の変化に対応した介護の知識・技術、(5)衛生管理に関する知識・技術、(6)認知症に関する知識・技術、(7)福祉制度と法に関する知識、(8)栄養素と被服に関する知識・技術、(9)介護予防に関する知識・技術、 (10)価値観を尊重した介護技術、(11)緊急時に備えた介護技術、の11項目である。これらの在宅ケアサービスに必要とされている介護福祉士の専門性に関わる内容を骨子とする、介護福祉士養成教育が大切である。
著者
野﨑 瑞樹
出版者
東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
雑誌
保健福祉学研究 = Journal of health and social services (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.9-17, 2016-03-31

地域住民による高齢者の見守りは,見守りとネットワークの目的や手段によって多様であり,専門職はそれぞれに合った支援をする必要がある。本論では東京都において見守り支援に関わっている地域包括支援センターと関連機関の専門職およびコミュニティソーシャルワーカー(CSW)にインタビューを行い,住民による見守り実現のための働きかけについて明らかにした。まず見守りネットワークについて,住民と専門職の関わり方から₃つのタイプ(個別の対象者支援,地域活動,拠点のネットワーク)に分類した。次に,働きかけの内容を野﨑(2014a)の項目と照合して整理した。その結果,個別対象者支援,キーパーソン支援,地域ネットワークづくりといった支援と,発見,課題,地域把握となった。このうちキーパーソン支援は対象者支援ネットワークと地域活動ネットワークのどちらでも行われており,専門職と本人を含む住民との協働によってミクロレベルとメゾレベルが連動する重要な接点になると考えられた。