著者
癸生川 義浩 郷右近 歩 野口 和人 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.83-94, 2004-03-31

本稿では、知的障害養護学校小学部で行われている"遊びの指導"について、実態と課題について明らかにすることを目的とした。教師を対象としたアンケート調査の結果から、1)知的障害養護学校の教員の多くは"遊びの指導"について必要性を感じていたこと、2)授業の計画立案時には昨年度の活動案を重視していたことが示された。知的障害養護学校における"遊びの指導"の授業内容と、就学前施設における調査結果との比較より、養護学校において就学前施設で行われている遊びとほぼ同じ内容の遊びが行われていたことが明らかにされた。加えて、養護学校においては、就学前に受けてきた指導についての把握が十分に行われないままに指導が行われていることが指摘された。これらの問題の背景として、就学前施設と養護学校間の情報の共有が十分ではないということが考えられた。
著者
畠山 温子 菊池 紀彦 平野 幹雄
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.215-227, 2008

本研究では、社会技能訓練における重症心身障害児(者)への応用の可能性について検討するために、発達障害児(者)に対し実施されてきた社会技能訓練及び社会技能訓練に関連した先行研究を整理した。特に、交通機関利用スキル及び買い物スキルに焦点を当て各々の活動内容を整理した上で、発達障害児(者)に対してスキル獲得訓練を実施する意義について議論することを目的とした。はじめに、社会技能訓練が目指したものについて注目したところ、社会技能訓練は社会参加あるいは社会的自立を目指した活動、生活空間の拡大を目指した活動の二点に大別された。次に、交通機関利用スキル及び買い物スキル獲得を目指した社会技能訓練に注目したところ、両者ともシミュレーション場面と実際場面を組み合わせた訓練がスキル獲得に有効であったこと、買い物スキルの獲得には環境側の要因が大きくかかわってくることが示された。以上より、発達障害児(者)にスキル獲得訓練を実施したことは発達障害児(者)が社会に参加する機会を提供することとなり、重症心身障害児(者)へも同様のことが当てはまる可能性が示唆された。今後は、個々人に必要とされるスキルを見極めることの必要性や先行研究を応用した新たな支援法略の検討が課題としてあげられた。
著者
佐藤 直由
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.17-33, 2003-03-31

本稿は、昭和20年代後半の山形県を事例に、青年団の社会福祉活動を検証した。山形県の青年団の活動は、選挙浄化運動、産業開発青年隊運動、社会福祉活動が三本柱であった。その中で社会福祉活動の活動プロセスや活動内容は、資料が整理されず、検証もされてこなかった。検証を行うための資料として、山形県社会福祉協議会が発行した広報誌『たすけあい』を主に利用し、活動の方針、活動の内容、活動の目的を考察した。さらに、社会福祉指定団の研究活動も考察した。山形県の青年団の活動方針は新しい社会の建設にあり、活動内容は農繁期の託児や苗代の消毒、被服補修といった生活に直結した活動であった。そして活動目的は人間的教養を高め、地域組織の連携を図ることに置かれた。社会福祉指定団の研究活動の一つは、地域問題の発見を促す社会問題地図の作成にあった。その結果、青年団の社会福祉活動は、地域生活の向上と民主化を進める実践であったことが明らかとなった。
著者
小渕 高志
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.11-25, 2006-03-31

日本社会の近代化と脱近代化の過程を、われわれは観察できる。何が社会政策の発展に影響を与えたのか?その結果として、どのように福祉国家が発展していったのか?本稿では、これらの疑問に答えるために、日本の福祉国家の歴史を3つの時代に区切って考察している。第1の区分は、1920年代まで:"福祉国家前史"である。第2の区分は、1930年代から1950年代:"第2次世界大戦と福祉国家"である。第3の区分は、1960年代から1980年代:"福祉国家の進展と再編成"である。考察を進めるにつれ、工業化、社会の民主化、人口の高齢化、福祉多元主義(福祉国家から福祉社会への移行)といった社会政策の形成過程への影響が明らかになった。これら4つ観点から社会政策の形成過程への影響を、次のものに見ることができる。それらは、家族の多様化(世帯の縮小が社会保障を増大させる)、仕事の多様化(脱工業化は労働力の柔軟化を必要とする)、共同体の多様化(個人化)、ライフコースの多様化(晩婚・晩産は少子高齢化を招いた)である。これらの社会的な変化の結果、個人はそれまで所属していた集団から離脱し、家父長制から解放される。しかし、集団による保護を失い、社会的に排除される可能性もある。現代社会に生きるわれわれは、これらの社会変動にとても弱い。こうした社会変動は、既存の福祉国家に新しい課題を突きつける。新しい社会政策における21世紀型の福祉国家は、これらの新たな課題に応えていかなければならない。本稿は、社会政策の歴史から新しい課題を紐解くための社会学的考察である。
著者
大沼 由香 伊藤 博義
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.35-46, 2003-03-31

介護福祉士は、高校卒から4年生大学卒までの養成施設や国家試験による多種多様な資格取得方法が認められているが、年間4〜5万人が有資格者となり、これまでの登録者数は約30万人である。このように多様な介護福祉士の専門性を一定水準に確保するためには、資質の向上が必須課題であるが、介護職種の低賃金・不安定雇用など、福祉労働者の待遇問題も大きな課題となっている。本研究の目的は、専門学校出身の若い介護福祉士の待遇と専門職性の満足度等を記名・記述調査し、問題点を整理し、課題の解決に向けて考察することである。調査結果から、専門職性と就労実態の満足度は相関関係にあることが推察される。なお、資質向上の課題として、1.介護福祉士自身の課題,2.職場で解決すべき課題,3.社会福祉事業自体の課題についても、若干の提言を行う。
著者
本田 春彦 仙道 美佳子 高橋 絵理 平田 ちあき 植木 章三
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.51-61, 2005-03-31
被引用文献数
2

本研究は,身体機能と抑うつとの間にどのような関連があるのかを明らかにするために,宮城県S町に在住する75歳以上の在宅高齢者281人を対象に,面接調査と体力測定を実施した.握力,10M最速歩行時間,UP&GO,開眼片足立,長座位体前屈の体力測定項目や老健式活動能力指標の得点といった身体機能と老年うつ病スケール(Geriatric Depression Scale)の得点に着目し,分析をおこなった結果,抑うつ症状と関連している身体機能は歩行機能であり,また生活機能の低い群は高い群に比べうつ傾向が高いことが明かとなった.また,身体機能の状態を良好に保つことが抑うつ傾向を予防することにつながると考えられた.
著者
西村 愛
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.99-111, 2008

近年、インクルージョンという理念が障害者福祉の分野に浸透しつつある。しかしながら、インクルージョンは具体的などのような実践によって、達成できるのかについて、研究および紹介されたものは少ない。本稿では、インクルージョン実現に向けた「ちょこさぽ」の実践を紹介することにより、知的障害のある人たちが地域で生きるとは何かを考察したものである。「ちょこさぽ」の実践を重ねていくうちに、学生と知的障害者の間に自然な関係ができていった過程を紹介した。知的障害のある本人が参加を希望していても、 「ちょこさぽ」への参加の可否は親に委ねられていることを問題点として指摘した。その課題を解決するためには、知的障害のある子どもの将来の生活について、どのような悩みをもっているかということについて、支援していくべきであると結論づけた。そのような親をサポートするネットワークをつくることは、知的障害のある人たちが親亡き後も地域で生活していくことにつながると思われる。
著者
西村 愛
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.75-91, 2007

今、知的障害者福祉は大きな変動期にある。1970年代は、大規模入所施設であるコロニーを中心に、全国各地で知的障害者の入所施設が次々と増設されていった施設中心の福祉の時代であった。それから約35年以上経った現在、「重い障害があっても地域で暮らす」というノーマライゼーションの思想がようやく浸透しつつある。しかし、35年前と比較して、地域の基盤整備は整ったものの、親が抱く「親亡き後」の問題は厳然としてある。本稿では、日本全国に入所施設が次々と建設されていった時代から、現在の施設批判および地域生活移行に至るまでの35年間で、「何が変わったのか」「何が変わっていないのか」を明らかにした。そして、未だに家族のケアに依存している問題を指摘し、問題解決に向けて親子を分離して「どのように支援していくか」という視点が重要であると結論づけた。
著者
今城 周造 佐藤 俊彦
出版者
東北文化学園大学
雑誌
保健福祉学研究 (ISSN:13484567)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 2004-03-31

本研究の目的は喫煙行動の規定因の検討であった。計画的行動の理論によれば行動意図は、行動への態度や、主観的規範、統制認知の影響を受ける。本研究では、これらの変数を測定する質問紙調査を行った。対象者は大学生159人(男75、女84)であった。その結果、喫煙への態度には喫煙者と非喫煙者の間に差はなく、両者とも喫煙をむしろ否定的に捉えていた。一方、喫煙者は非喫煙者よりも、重要他者から喫煙を是認されていると感じていた。また喫煙者は喫煙を容易なことと認知するが、非喫煙者はむしろ困難と認知していた。階層的重回帰分析の結果、行動意図と統制認知の間には強い正の相関があった。態度と主観的規範はいずれも行動意図と正の相関を示すが、その関係は弱い。これらの結果は、計画的行動の理論が、喫煙行動の理解と予測に有効な道具となりうることを示す。また喫煙・禁煙に伴う困難さが、分煙・防煙の成否を左右する可能性が示唆された。