著者
難波 紘二
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.75-80, 2003-09-18
被引用文献数
1

本論文タイトルの疑問に答えるために、科学におけるクローンとは何かを簡単に検討した。クローンとは受精卵以後に一個の体細胞に由来して形成された、組織された細胞集塊をいい、このため遺伝的構造が同ーとなる。クローンには多種多様な存在が知られている。「人間の尊厳」という言葉の歴史を検討し、それが時代を超えて普遍の意味をもつというのは事実でないことを明らかにした。しばしばこの言葉は議論において根拠を提示することなく、異論を封じ込めるのに用いられている。ヒトのクローン技術は現時点においても生殖医学において許容できる範囲の安全率をもっていると考えられる。従って、この技術を利用する以外に自分の子供を絶対にもつことができない個人が出現した場合に、この技術の人間への応用が、他の個人や社会に危害を与えることが明らかに証明されるのでない限り、それを禁止するのは自由に対する行き過ぎた抑圧と見なされるべきである。

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