- 著者
-
大柴 弘子
- 出版者
- 日本生命倫理学会
- 雑誌
- 生命倫理 (ISSN:13434063)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.1, pp.181-189, 2003
- 参考文献数
- 36
現在、ARTにより出現する多様な「母」たちは「サロゲート・マザー」「ホスト・マザー」「借り腹・貸し腹」「ドナー」などの語で呼ばれ、あるいは呼称がないなど、その存在が瞹昧視あるいは無視されている。このことは、「母」のみならず「母・子」関係そのものが存在しないかのごとく、否定される危険性がある。この新たな「母」たちは、従来の母概念では説明できない存在者である。そこで本論では、まず、新たな概念設定によりARTによる新たな「母」の存在を明らかにする。次に、それに基づきこの多様な「母」たちおよび「親・子」の実態と問題を示す。そして、多様な「母」たちの存在を社会がいかに公認できるかという問題ではなく、問題の根源は「不妊治療」そのものにあることを示す。