- 著者
-
奥谷 喬司
橋本 惇
三浦 知之
- 出版者
- 日本貝類学会
- 雑誌
- Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.3, pp.91-96, 2004-01-31
- 被引用文献数
-
1
鹿児島湾の水深100m前後の海底には,古来から漁業者が「たぎり」と呼ぶ噴気孔がある。その周辺には有鬢動物の1種サツマハオリムシの大群集の存在が知られているが,それに伴って出現するキヌタレガイ科の1種を研究した結果,Solemya(Solemya)に属する新種と考えられるので記載する。Solemya(Solemya) tagiri n. sp.タギリキヌタレガイ(新種・新称)殻長2cm前後,外見は他のキヌタレガイ類と似ていて,細長い亜方形,殻頂はほとんど聳えず,後位7/9付近。漆塗り様の殻皮の色はややうすく,放射状彫刻に沿って細い赤褐色の色帯がある。靱帯は後位,外からは見えず後背縁と靱帯受との間にある。後背縁は僅かに持ち上がる。内部に支柱はない。消化管を欠き,鰓は著しく大きい。鹿児島湾の水深76〜116mの「たぎり」付近。備考:日本産の小型種,アサヒキヌタレは明らかな外靱帯があり(Acharax),またキヌタレガイでは靱帯は内在し(Petrasma),靱帯受にひだがある点で異なる。東太平洋のSolemya reideiはやや大きく(6cm)で,内面に靱帯葉と弾帯受に支柱を持つ点で区別される。