著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.73-79, 2002-12-31
参考文献数
12

During a recent inventory of cephalopod collection in the University Museum, the University of Tokyo, considerable number of specimens came to light that were collected in the early days of the Institute of Zoology, Tokyo Imperial University, and duning the establishment Misaki Marine Biological Laboratory in the late 19th and early 20th centuries. Names recorded on the labels include those of famous scholars such as Isao Iijima, Kakichi Mitsukuri, Madoka Sasaki, along with that of the master collector Kumakichi Aoki. The collection was confirmed to containe the holotypes and syntypes of 19 taxa described by Sasaki and the holotype of Opisthoteuthis depressa Iijima & Ikeda.
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.93-99, 2006-10-10

以前からそういう話を聞いてはいたが,先頃茨城県にある「あ印」というタコの加工会社に招かれて工場を見学させて貰ったところ,タコが大量の貝を「採集」して来ることを実見した。過去にどこかに誰かが,同様の情報を書いているのではないかと探してみたところ,築地の中央魚類(株)にお勤めの会員石川謙二氏から氏がタコが採って来る貝について1986年春相模貝類同好会でご発表になり,同年,雑誌「アニマ」夏休み特大号に写真付きの記事を掲載されたとご教示を戴いた。その上,同氏から1996年2月23日に同好会に配布された「アフリカのタコが携帯してくる貝」という資料(本稿付録に掲載)も戴いた。いっぽう,岡本正豊氏からは「週間文春」1981年4月16日号に掲載された「タコのおみやげ」というカラーグラビアのコピーをご提供戴いた。この記事には明石市の冷凍たこの解凍場に勤務する伊藤明夫氏という人が集めた貝の写真が付いている。このような週刊誌の貝類関係記事を保管しておられる岡本氏のマメさにも感服したが,同好会や学会のマニア以外にも伊藤氏のような隠れた貝類収集家がいるのも驚きであった。石川氏の業績や「週間文春」の記事に比べれば,今回のコレクションは僅か1回きりのしかも短時間の採集努力に留まったが,筆者としては初めての体験でおおいに興味をそそられたので,小文とした。
著者
三宅 裕志 窪寺 恒己 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.38-41, 2005-07-30

Video images of a very large squid (ML 1m<) were taken by the ROV Hyper-Dolphin at a depth of 1161m near the bottom of Sagami Bay in March, 2004. It was tentatively identified as Gonatopsis sp. (Gonatidae), and may represent an undescribed species. It is surprising that the existence of such a large squid in Sagami Bay has not been recorded to date, despite a tremendous amount of sampling and fishing.
著者
奥谷 喬司 リンズィー ドゥーグル 窪寺 恒己
出版者
日本貝類学会
雑誌
ちりぼたん (ISSN:05779316)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.32-36, 2007-08-31

ヒレギレイカCtencpteryx siculus (Verany,1851)は沖合性で稀にしか採集されない小型のイカである。鰭があたかも魚類の鰭のように軟条で支えられているように見える風変わりなイカで,固定標本を見ると大抵軟条間の薄膜は切れぎれになっているところからヒレギレイカ(瀧巌)の和名がある。筆者の一人(D.L.)は昨年3月,房総半島鴨川沖で,スーパーハープ・ハイビジョンビデオカメラを搭載した無人探査機ハイパードルフィンによって,世界ではじめて本種の遊泳する姿を観察・撮影した。映像に撮られた証拠標本はハイパードルフィン装備のスラープ・ガン(吸引式採集器)により採集した。
著者
奥谷 喬司 土田 真二
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3-4, pp.125-133, 2005-01-31 (Released:2018-09-01)
参考文献数
6

海洋科学研究開発機構(JAMSTEC)の無人深海探査機ハイパードルフィンによって,小笠原諸島西方の海形海山の中腹,水深912mにおいてハワイヒカリダンゴイカの小群が発見された。いずれの個体も海底面すれすれのところでホーバリングを行っており,海底に付いているものや高い位置で遊泳しているものは見られなかった。各個体ともまちまちな方向を向いており,海流に支配されているようには見えない。本種はこれまでもハワイ他西太平洋各地に分布していることは知られていたが,これまでの採集はおおむね開放ネットによるものであり,中層浮遊性とされていたが,今回の観察により漸深海底帯で,近底層性の生活を送っていることが判った。この観察の時,9標本が採集されたが,いずれも雌で,ハワイから採集されたタイプ標本も,またサモア北方のコンベ礁から採集されたものも雌で,雄の報告はない。また,Nesisは琉球や小笠原など日本近海を分布範囲にあげているが,それらの詳細についての報告は見あたらない。これらの標本と過去の形態記載と比較も行い,腕長式などにかなりの種内変異があることも確かめられた。
著者
奥谷 喬司 小島 茂明 金 東正
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.29-32, 2004-06-30
被引用文献数
1

シロウリガイ属はこれまで北東・北西太平洋から多様の種類が知られてきたが,南西太平洋からはニュージーランド沖とラウ海盆からこの属の出現が予報的に報じられているのみで,分類学的な詳細は公表されていない。ところが,1994年にドイツのゾンネ号が行ったニューアイルランド海盆の調査中,リヒル島沖のエジソン海山から本属の標本を採集していた。今回その後同地点から採集された標本の形態学的および分子系統学的研究(Kojima et al.,未発表)を行った結果,我が国本州沖の南海トラフに棲むナンカイシロウリガイに近似の未記載種であることが判ったので記載した。Calyptogena(Archivesica) edisonensis n. sp.エジソンシロウリガイ(新種・新称)殻長99.8mm(ホロタイプ)。殻頂は前方1/4〜1/5くらいに偏っていて,殻の後域は僅かに広がる。殻皮は薄く,殻頂域では剥離している。〓歯は放射状。浅い殻頂下洞がある。前足牽引筋痕は明らか。エジソン海山の水深1450m。あらゆる点でナンカイシロウリガイに似るが,ナンカイシロウリガイでは前足牽引筋痕が深い孔状になる特異性がある。
著者
奥谷 喬司 大須賀 馨
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.67-69, 1986-03-31

三宅島付近でアミダコOcythoe tuberculataが, オオサルパTethys vaginaの体腔内に入っている生態が観察された。標本の採集が行われなかったので, 性別は不明であるが, これまでサルパの体内で発見された2例(Jatta 1986, Hardwich 1970)はいずれも雄と報告されている。今回の観察は1984年6月1日三宅島沖で著者の一人(大須賀)が潜水中に行ったもので, オオサルパの色彩, 内臓器官が共に明瞭でない所から, 生体に入るのではなく単に外鞘を利用しているのかもしれない。
著者
奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.57-59, 1994-03-31

テレビ東京「ときめきマリンII」のスタッフのご好意により, 沖縄県慶良間諸島に生息するウコンハネガイCtenoides ales (Finley, 1927)の発光をビデオテープを通じて観察することができた。発光は外套膜縁に沿って走る青白く光る筋が素早く明滅するものである。左右の外套膜縁の閃光状の発光はかならずしも同調しないので, しばしば交叉して稲妻のように見えることもある。従来, 二枚貝綱における発光はツクエガイ科のツクエガイGastrochaena cuneiformisとニオガイ科のヒカリカモメガイPholas dactylusとヒカリニオガイBarnea candidaにおける細胞外発光(発光液の分泌)しか知られていなかった。本種における発光は組織学的研究は行われていないが, 光の強さや筋状の発光部位の移動のす早い速度などからみて, 細胞内自家発光と推察される。このような形式の発光と, それが, ミノガイ科において見られるという事実はおそらく世界最初の発見と思われる。
著者
サルセドーバルガス マリオ・アルハンドロ 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.119-127, 1994-08-31
被引用文献数
1

The two genera with two subgenera each are recognized for the squid family Mastigoteuthidae. The genus Mastigoteuthis contains two subgenera, Mastigoteuthis s. str. and Echinoteuthis. The genus Idioteuthis is here resurected, and it is divisible into two subgenera, Idioteuthis s. str. and Magnoteuthis nov.
著者
瀬川 進 井塚 隆 玉城 世雄 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.101-108, 1993-03-31

1992年5月18日に, 沖縄県石垣島の米原沖約1.5kmのサンゴ礁で囲まれた水深約23mのくぼ地に発達した直径約20mの枝状の群体を形成するミドリイシ類を主体とするサンゴ礁において, アオリイカの産卵群を観察する機会が得られた。産卵群は少なくとも, 最後の観察を行った7月2日まで継続的に観察され, その間の産卵群の個体数は目視によると, 最低約20個体から最高100個体以上であった。産卵群の詳細な観察は1992年5月25日および5月28日にスキューバ潜水により行った。数個体を除いたほとんどのアオリイカは雌雄の対をなしており, 雌雄は同一方向を向いて上下にならんで遊泳していた。卵嚢は死んだ枝状のサンゴの上に発育した生きているサンゴの隙間を通して, 死んだサンゴの枝に産み付けられていた。卵嚢は従来報告されているアオリイカの卵嚢のように, 数十の卵嚢が卵嚢の基部から房状に束ねられて産み付けられるのではなく, 個々の卵嚢が比較的ばらばらにサンゴに付着しており, すでに産み付けられた卵嚢の中央部に付着して産み付けられた卵嚢も観察された。卵嚢中には5&acd;13個(平均9.2個, 標準偏差1.2個)の卵が1列に並んでいた。アオリイカでは1卵嚢中に10個以上の卵を保有する卵嚢の報告は今までに知られていない。産卵を行っている雌雄に他のアオリイカが近付きすぎた場合に, 番(つがい)を成している雄が近付きすぎた個体に対して独特の体色変化を示す例が観察された。他の個体が番を成している雄の上から近付いた場合は, 雄は雌に近い頭部および腕の部分を褐色にし, 相手に近い外套部を白く浮き立たせた。また他の雄が横から近付きすぎた場合には, 雄は雌に近いほうの体半分を褐色にし, 相手の雄の側面半分を白色に, 背中線を境に左右に異なる体色を示した。このような体色変化はアオリイカでは初めての観察である。従来沖縄に生息するアオリイカは, 漁業者によって「アカイカ」, 「シロイカ」, 「クアイカ」などと異なった名前で呼ばれていながら, 形態的には区別が付けられていなかった。しかし, 今回の観察により産卵生態, 1卵嚢中の卵数の違い等から, 明らかになんらかの形で隔離された複数の異なった個体群の存在が示唆される。
著者
奥谷 喬司 藤原 義弘 藤倉 克則 三宅 裕志 河戸 勝
出版者
日本貝類学会
雑誌
Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.61-64, 2004-06-30
被引用文献数
4

約1年半前に鹿児島県野間岬沖の水深約200〜250mに沈下されたマッコウクジラの死体に形成される生物群集の調査を行った結果,鯨骨上にはヒラノマクラ(少数のホソヒラノマクラ混在)の濃密な群生がみられた。本種の外套膜後端は筒状に丸まり,極めて長い"入水管"を形成し,また完全な管状になった出水管を持つほか,足もよく発達して活発に動き回るというイガイ科としては極めて特異な機能形態を持つことが判った。長い水管のため,本種が群生しているとあたかも鯨骨が細いマカロニで被われているようにさえ見える。ヒラノマクラの生体の観察は今回初めてと思われるので,速報する。
著者
奥谷 喬司 中村 征夫 関 勝則
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.237-239, 1995-09-30 (Released:2018-01-31)
参考文献数
4

著者の一人関は1991年夏, また, 中村は1995年5月, 根室海峡羅臼沖で卵塊を腕に抱えて遊泳しているイカを撮影した。これまでタコ類の卵保護や保育は知られていたが, イカ類の卵保育はいまだかって一例の報告もない。今回標本を直接研究することはできなかったが, 開眼類イカの卵保育行動の世界最初の発見となるので速報する。
著者
奥谷 喬司 後藤 芳央
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.305-311, 1983-12-31

北アメリカ大陸南東岸フロリダから, カリブ海, アンチルス列島を経て, 南米北東岸に分布するアダンソンオキナエビスガイEntemnotrochus adansonianaのうち, 隔絶した孤島バーミュダ沖から産出する個体群を別亜種と認めたのでここに記載する。新亜種バーミューダオキナエビスガイE. adansoniana bermudensisの多くの形態的特徴は基本亜種のそれと共通しているが, 次の諸点で区別し得る。(1)殻頂角が小さく(63°), 基本亜種のように螺塔は凸状の概形を示さず, 尖る。(2)切込みが短かく, 基本亜種では150°以上に及ぶが130°程度である。(3)殻の表面は基本亜種のように光沢がない。(4)調査標本は殻高55.5mm(完模式標本)ぐらいであるが, 軟体部が保存されていないのでこれで成熟個体か否か判断は出来ない。
著者
奥谷 喬司 上村 清幸
出版者
The Malacological Society of Japan
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.39-_47-2_, 1973-07-31 (Released:2018-01-31)

房総半島勝浦沖南東10&acd;20浬に形成されるスルメイカ漁場から, 当業者が"アブライカ"と通称しているイカが屡々混獲される。著者の一人, 上村が1972年8月, 10月, 12月に同漁場の漁獲物中から見出した"アブライカ"の9標本(5♂, 4♀)につき研究した結果, これが日本未記録属Nototodarus PFEFFER, 1912に属する未記載の一種と判明したので, ここにNototodarus nipponicus n. sp.の新名を与え記載した。和名にはアブライカを採用したい。Nototodarus属とした根拠は, (1)漏斗溝に, 縦襞しかない(Todarodinaeの特徴), (2)側腕大吸盤角質環上の歯のうち最外縁の1歯が他のものより著るしく大きい, (3)両腹腕とも交接腕として変形していることである。同属には4既知種(N. sloani (GRAY)=属模式, ニュージランド&acd;フィジイ;N. gouldi (MCCOY)タスマニア&acd;オーストラリア;N. hawaiiensis (BERRY)ハワイ;N.philippinensis Vossフィリッピン&acd;南シナ海)があるが, 本新種は, それらとは(1)外套膜表面に一種のモザイク様又は小鱗様の彫刻がある, (2)外套膜が太短い, (3)鰭幅が外套長の70%に及ぶ, (4)鰭の後縁角が著るしく大きく, 120°&acd;130°であるなどの点から容易に区別される。なお, これらの特徴のうち(1)は, 本種の属するアカイカ科Ommastrephidae中には他の例を見ない。本新種に関して生物学的知見はほとんどない。しかし, これが勝浦南東沖を中心とする10&acd;20浬の大陸棚縁辺部に形成されるスルメイカ漁場から混獲される所から見ると, 1972年は黒潮の接岸傾向が強く, 魚群の滞泳する深度100&acd;250mの範囲は夏冬を通じて20°&acd;11℃(中心15℃)にあったので, 本新種もほぼこの付近に分布するものと考えられる。