著者
石田 信一
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学文学部紀要 (ISSN:13481444)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.A19-A30, 2005-03-15

本稿は一九九〇年代から現在に至るクロアチアの歴史教育と歴史教科書の問題について概括的な考察を行ったものである。九〇年に社会主義体制を放棄し、九一年にユーゴスラゲィア連邦から離脱して独立を達成したクロアチアは、この二つの変化を歴史教育の分野にも反映させる必要があった。それはクロアチア・ナショナリズムに立脚しつつ、連邦体制下で強調されてきた南スラヴ諸民族の一体的な歴史叙述を放棄し、かつてタブー視されていた<クロアチア独立国>などを再評価する動きにあらわれている。社会主義時代から国定教科書しか存在しなかったクロアチアでは、独立後も一元的な歴史教育が導入されていたが、一九九〇年代末から二〇〇〇年にかけて教科書出版社および教科書の複数化が実現し、各教科書の叙述もようやく一面的なものではなくなった。しかし、全体的にクロアチアの独自性を強調するあまり、周辺諸国との関係さえ理解しにくいほどに叙述のバランスを欠くものとなっており、現在では若干修正されているとはいえ、なお大きな問題となっている。また、教科書の種類の多さに比べると、各教科書の特徴はさほど明確ではなく、この点でも新たな教科書づくりが求められている。

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