著者
玉井 義浩
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.87-106, 2006-03-30

現実の報酬支払契約の多くは,純然たる「成果連動型報酬」ではなく,低位の成果に関しては固定的な「基本給」を支払う,という形態をとる.このような,固定給と変動給の組み合わせによる報酬契約を従来の標準的なプリンシパル・エージェント問題の次善解として導出するには努力と成果の間の確率的関係に特殊な仮定(尤度比が下方の成果に関して一定となる)が必要である.これに対し本稿は,エージェントが,確率分布そのものがよくわからないという意味での,より高次の不確実性(ナイト流不確実性)に直面し,epsilon-contaminationと呼ばれる複数の確率分布から成る集合についてのMaximinの期待効用の最大化を図る場合には,より一般的な主観確率分布に関して下方に硬直的な報酬契約が次善解として自然に導き出されることを示したものである.エージェントが抱くナイト流不確実性の度合いが強まるほど,固定給の対象となる成果の範囲が広がる一方,変動給部分の賃金増加率は高まる,という結果が得られる.

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こんな論文どうですか? ナイト流不確実性と下方硬直的インセンティヴスキーム(<特集>ケインズ経済学の再検討)(玉井 義浩),2006 https://t.co/eY7eFbC3dT

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