- 著者
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田中 謙
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 長崎大学経済学部研究年報 (ISSN:09108602)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.53-88, 2004-03
日本は,先進諸国の中で突出して喫煙率が高い「タバコ汚染国」であるが,その原因として,(1)多くのタバコ訴訟における裁判所の原告敗訴の判断のほか,その前提として,(2)タバコをめぐる行政的規制(喫煙規制)が際立って弱いことが指摘できる。タバコ訴訟において,裁判所は,原告の請求を棄却する法的根拠として,(1)受動喫煙の重大さの不承認,(2)喫煙の社会的承認,(3)受忍限度論,(4)建物構造上の困難,といった理由をあげているが,理解に苦しむものが少なくない。一方,喫煙者と非喫煙者の利害の対立構造や,喫煙の自由と嫌煙権との関係を踏まえれば,喫煙規制の強化は不可欠である。今後の喫煙規制のあり方を考察するに当たっては,(1)非喫煙者の被害を防止し,健康を保護するという視点から,「受動喫煙防止施策」を充実させることはもちろんであるが,(2)現在,未成年者による喫煙が顕著であり,未成年者を保護するという視点から,「未成年者の喫煙防止施策」も必要である。さらに,(3)喫煙者も「やめたいけれどもやめられない」という面があり,喫煙者の健康を保護するという視点から「喫煙者減少施策」も必要である。具体的な法制的課題をあげると,(1)「受動喫煙防止施策」の視点からは,(1)公共の場所・共有する生活空間における喫煙規制,(2)職場での禁煙規制,(3)歩行喫煙(歩きタバコ)規制などが考えられる。(2)「未成年者の喫煙防止施策」の視点からは,(1)学校における全面禁煙,(2)タバコの宣伝広告規制の強化,(3)ドラマ・映画における喫煙シーンの禁止,(4)タバコの自動販売機の全面禁止,(5)タバコ税の大幅値上げ,などが考えられる。(3)「喫煙者減少施策」の視点からは,(1)タバコの宣伝広告規制の強化,(2)ドラマ・映画における喫煙シーソの禁止,(3)タバコの自動販売棟の全面禁止,(4)タバコ税の大幅値上げのほか,(5)タバコの有害表示の義務化が考えられる。In Japan, there are a lot of smokers compared with advanced nations. The plaintiff lost the tobacco suit. And the regulation against smoking is not strict. But the reasons for judgment is strange, and the Japanese Government should tighten regulations on smoking. The Japanese Government must take preventive measures against passive smoking. And the Japanese Government must regulate smoking with the view of minor protection and smoker protection.