著者
柴田 直
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.342, pp.25-33, 2006-11-04

ものを見て瞬時に理解し、即座に適切な行動をとる。これは生体の最も得意とする情報処理である。しかし、これは現在最も進んだコンピュータ技術をもってしても、その実現は非常に困難である。我々は、ヒトの心の情報処理をヒントに、心理学的脳モデルVLSIシステムを開発してきた。VLSIチップ上に過去の記憶を大量に蓄え、入力事象にもっともよく似た過去の事例を瞬時に連想想起することによって、柔軟な情報処理実現を目指す研究である。このシステムを用いてロバストな画像認識が行えるよう、64×64ピクセルのグレースケール画像を64次元の特徴ベクトルとして表現する、新たなべクトル化アルゴリズムを開発した。これは、入力画像より方向性エッジを抽出し、その空間ヒストグラムによって画像をベクトル表現するアルゴリズムである。人間の目によく似通って見えるものは、ベクトル空間においても近い位置にマッピングされるという優れた特性を持つ。手書きパターンの認識、医用X線写真解析、顔検出等、顔の個人認証への応用例で、大変ロバストな特性が実証された。本論文では、顔検出への応用を例題として取り上げ、視覚情報処理のハードウェアモデル化における課題について議論する。実時間処理実現に際しボトルネックとなるのは、入力画像から特徴を抽出する初期視覚処理であるが、専用チップの開発により、100MHzの動作で、2.2GHzプロセッサ搭載のPC上のソフトウェア処理と比較して、一万倍以上の高速化を達成した。

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