- 著者
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南部 さおり
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- no.29, pp.96-111, 2004-10-18
- 被引用文献数
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「代理人によるミュンヒハウゼン症候群」(MSBP)は,「(1)親あるいは親代わりの人物によって偽装された児童の疾患,(2)その児童は医学的検査や治療に差し出され,それは通常,絶え間なく,しばしば複合的な医療手続をもたらしている,(3)その加害者は自分が子どもの病気の原因であることを否認する,(4)子どもが加害者から分離されると,急性症状や病気のサインは消失する」の4つの基準を満たす用語として広く一般的に用いられている医学的概念である(Meadow 1995).しかし,提唱者であるメードゥ自身が認めるように,この基準は特異性に欠け,医師やソーシャル・ワーカー,司法関係者たちに混乱を生み出した.本稿は,医学的「症候群」としてのMSBP概念の特性と意義,同証拠が事実認定に与える影響を考察し,MSBPの概念がいかなる意義を持つべきかを明らかにする.MSBP概念は,発見が困難な虐待を発見するためのツールとして用いられることに最大の意義が存する.刑事事実認定においてMSBP証拠は,不可解に見える現象に対する医学的アプローチとして参照可能であるが,それはあくまでも「症候群」証拠にすぎず,その性質上,犯罪事実の認定に際しての「決定的証拠」とはなし難いものである.