著者
辻 大介
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.43-52, 2006-03-25

本稿では、中村[2003]の先行研究によって明らかになった携帯メールと孤独不安の関連について、さらなる検討・考察を加える。2004年の予備調査および2005年の大学生調査の分析結果からは、携帯メールの利用頻度と孤独不安とが正の相関を示すことが確認され、また、携帯メール利用と孤独不安が互いに互いを高めるような螺旋状の増幅過程の存する可能性が示唆された。宮台[2005]はこうした「悪循環」の過程の背後には対人不信が潜んでいると論じているが、2003年の全国調査のデータを再分析した結果からは、孤独不安と一般的信頼尺度はむしろ正の相関関係にあることが認められた。山岸[1998]の信頼に関する議論にしたがえば、この結果は、関係性の流動化による社会的不確実状況への適応として、関係性への敏感さが求められつつ、そのことがまた関係性の不安の感じやすさにつながっているものと解釈できる。

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