著者
セマコフ ヴラディーミル
出版者
大阪外国語大学
雑誌
大阪外国語大学論集 (ISSN:09166637)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.59-69, 2006-03-28

17世紀古式分派の文献(アワークム文学流派)においては、過去を表現する動詞にパーフェクト(л型)、アオリスト、インパーフェクトの形がある。-л型がロシア語の口語表現に影響を受けた結果だとすれば、アオリストとインパーフェクトは古式分派の文語的伝統によるものである。アオリストの中で最も頻度の高い形の一つは、「レチェ」の三人称単数である。17世紀の文献では、「レチェ」は-л型と同じ時間的コンテクストの中で用いられる。これは、アオリストの文法的意味が消失したこと、そして文学の叙述部分に見られる一種の特徴である「レチェ」の変化を証明するものである。概して、17世紀の古式分派の文献は「レチェ」の形に以上のような伝統を支持しているが、一方で、この時代の最も傑出した作品である『アワークムの生涯』は全く別の修辞的問題を提示している。アワークムにとって「レチェ」は文体的に有標の形であり、つまり、高尚な文体の要素である。『アワークムの生涯』では、アオリストの形が積極的に用いられており、古代教会スラブ語とロシア語が対照的に用いられることでアワークムの基本的な文学性が支持されている。アオリストの進化という観点から、17世紀の高尚な文献に文法形態上、語彙の変化する現象が見受けられる。これは言語における形態的機能の最終段階の一つであり、このときに固有の文法的意味が失われ、語彙基盤の極端な見方が生じる。アオリストの形は、「レチェ」に用いられる制約された数の動詞からのみ、形成され始める。

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CiNii 論文 -  17世紀古式分派の文献における「レチェ」について http://t.co/QGrBJG2F #CiNii

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