- 著者
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菊地 章太
- 出版者
- 桜花学園大学
- 雑誌
- 桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.181-190, 2003-03-31
聖母の「無原罪お宿り」の信仰は,その母アンナが神の恩寵によってマリアをみごもったとするもので,カトリック神学における重要な教義のひとつである。けがれのないマリアの聖性を主張するこの「無原罪お宿り」の信仰は,古くから教会暦の中で大きな位置をしめていた。そのため人々の信仰生活に深くかかわり,宗教美術や文学にも多くの素材を提供し続けたのである。ローマ法王庁がこれを教義として正式に認可したのは,1854年のピウス九世の勅書によってであるが,その信仰はすでに西欧においては中世末期にはじまり,対抗宗教改革時代のスペインにおいてとりわけさかんであった。本稿は「無原罪お宿り」の信仰を考察するうえで基礎となる文献資料をもとに,スペインにおける聖母信仰の高揚のありかたを明らかにしようと試みた。