著者
石月 静恵
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.143-163, 2010-03-31
著者
森川 敏育
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.151-169, 2008-03-31
被引用文献数
1

有馬,下呂と並び日本三名泉といわれる草津温泉は,高温で強酸性泉であるが故に,古くから薬湯としての効果が高く,かつて不治の病といわれたハンセン病患者が治療のために多く集まった。現代の不治の病「がん」患者が,秋田県の八幡平山麓にある玉川温泉に,一縷の望みを掛けて全国から集まってくるのに似ている。草津温泉は,明治2年(1869)の大火災以降,旅館業界に世代交代が起り,それまでハンセン病患者と一般湯治客が混在していた温泉街で,ハンセン病患者を分離させようとする動きが起り始めた。そして世界的にも例をみない,ハンセン病患者による自治集落「湯之沢」が誕生した。しかし,この動きこそが戦後の高原観光都市化へと発展し,湯治場温泉から広域観光の基地とスポーツ,音楽の観光温泉地へと脱皮するプロローグとなった。草津温泉が,過去の歴史的時代にハンセン病とどのようにかかわりを持ちながら今日に至ったかを,観光地理学的に明らかにしたい。
著者
石月 静恵
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-16, 2006-03-31

本稿は,平成16年度・17年度の科学研究費補助金による共同研究「大正・昭和初期日本女性史と台湾-北村兼子と『婦人毎日新聞』『台湾民報』」の調査の過程で生み出されたテーマを深めたものである。当初は,北村兼子の台湾認識を検討することを目的としていた。しかし,台湾での史料調査などを経て,婦人毎日新聞社主催の台湾での婦人講演会に北村と同行した林芙美子も台湾について叙述しており,それが台湾で批判されたことが判明し,林芙美子の言説についても検討する必要が生じた。婦人毎日新聞社講演会は,1930年に開催されたが,その前後にも,日本の知識人女性が,台湾を訪問し,台湾についての叙述が残されていることも明らかになった。1920年に訪台した林歌子や1935年に訪台した野上弥生子については,現地の女性雑誌に台湾での様子が掲載された。日本統治下の台湾においては,種々の女性問題が存在し,植民地であることによる加重もあった。訪台した日本の知識人女性がこれらの問題をとらえることができたかどうかを検討した。
著者
宮沢 厚雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.171-179, 2004-03-31

かつてのイギリス型の社会保障制度は,1970年代に財政危機と硬直化した行政運営を契機に行き詰まった。先進諸国では,1980年代には民間企業の手法を取り入れた公共サービスのあり方が試行された。日本でも行政改革の方向性が示され,図書館にも及んでいる。図書館では,1980年代の業務機械化を契機に人材調達が活性化した。同時に,業務委託も行なわれるようになり,その範囲は一般事務から専門業務まで及び,施設管理にまで至る。さらには,PFI事業による図書館や,NPO法人主体のPPP型の図書館も生まれ,図書館サービスに民間の活力が導入されている。図書館サービスは,公共性が確保されるのであれば,必ずしも行政が直接運営する必要はないという趨勢に至っている。課題とすべきは,ネットワーク情報資源の提供も踏まえて,労働条件の向上と図書館員の専門性の確保である。
著者
森田 優己
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.135-158, 2007

本稿は,イタリア中・北部における産業遺産の保存と活用,およびそれらを展開軸とする都市再生に関する筆者の見聞録である。産業遺産の意義は文化遺産や自然遺産,および労働文化との複合的な文脈の中に位置づけられるが,その保存と活用の仕方は次のように3分類できる。1.産業遺産の保存とその博物館としての再利用による地域貢献。2.旧重工業地域における産業遺産の保存と都市再開発によるランドスケープの形成。3.産業遺産である「カンパニィタウン」の保存による地方都市の開発,産業観光化の試み。こうして呼び起こされた「産業の記憶 industrial memory」は,地域のアイデンティティを再生し新たな活力を生み出す契機となることを期待されている。その方向性は,成熟社会における新たな産業の創出,とりわけ文化的観光を射程に入れたものと思われる。
著者
山中 正樹
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.240-233, 2006-03-31

「地獄変は」、芥川龍之介の最高傑作のひとつとして、発表直後から高く評価されてきた。それは、所謂<主人公>良秀の「芸術の完成のためにはいかなる犠牲も厭わない」という姿勢が、芸術至上主義の徹底的追求という芥川自身の姿勢と絡めて論じられてきたからである。しかし「地獄変」の<語り手>の語りを詳細に分析してみると、それは決して良秀の芸術至上主義的姿勢だけを宣揚しょうというものでないことが判明する。むしろ<語り手>は、良秀を描くというよりは、「地獄変」屏風完成の逸話を語りながら、「堀川の大殿」の実態を暴こうとしていたと考えられる。すなわち「堀川の大殿」に「二十年来御奉公」してきた、「大殿」に臣従し、従順であるはずの<語り手>が、実は「大殿」を裏切り、表面的な言説とは裏腹にその悪辣さを糾弾していたのである。そのことにより、良秀の芸術至上主義的姿勢が極まったのである。本稿は<語り手>に注目する事で、新しいテクストの読みを提示した。
著者
森川 敏育
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-116, 2005-03-31

2001年4月28日,台湾高雄県阿蓮郷の光徳寺に日台両国の宗教関係者が集まり,日本から運ばれた37体の孝養観音聖像の開眼法要が営まれ,台湾三十三観音霊場聯誼会会員寺院に引き取られて,台湾に三十三観音霊場が出来あがった。観音霊場を巡拝する宗教的習慣のない台湾に,日本人を対象とした観音霊場が創設された歴史的背景を明らかにし,同時に台湾の観光資源として日本人観光客を誘致する可能性について検討を行った。
著者
金子 幾之輔
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-58, 2008-03-31

本研究は,まばたきチックを呈する1名の男子(10歳,小学校4年生。以下,clと称する。)に対して,ハビット・リバーサル法(セルフ・モニタリング法付加)と母親へのカウンセリングを併用し,その臨床的有効性を検討した。治療の最初の段階では,clにハビット・リバーサル法を適用するとともに,母親へのカウンセリングによる情緒の安定化と養育態度の改善を図ったが,clのチック回数は一時的に減少するにとどまった。そこで,次の段階として,clに対してセルフ・モニタリング法を付加した結果,clのチック回数は漸時減少した。また,その治療過程において母親の情緒の安定化と養育態度の改善が有効に機能した。全体の結果として,clのチック症状は相当に軽減したが,まだ完全に治癒したとはいえないことから,今後も経過観察する必要がある。
著者
伊藤 秀文
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-18, 2008-03-31

2006年のハワイ訪問者数は約756万人と高い水準にあるが,このような成長の要因としては(1)最適な気候(平均気温夏季23〜31度,冬季14〜27度の温暖性,貿易風による快適性)(2)マーケット(需要)の特性,(3)観光インフラ(空港能力と航空路線,宿泊施設容量と質,商業施設,観光スポット充実)(4)プロモーション活動の推進及びその結果としての認知度の向上・定着等が考えられる。ハワイを成熟マーケットとして位置づけ,日・米マーケットを比較しながら現在の現状と課題を明らかにし,これからのハワイツーリズムのあり方を多方面から検討を試みた。
著者
浮田 真弓
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.113-121, 2003-03-31

岐阜県は、綴方教育運動において、大きな役割を果たした人物、今井誉次郎、野村芳兵衛を輩出した県である。また、戦後においては、恵那の綴方教育という特色ある教育実践を生み出した地域を抱えている。川口半平を取り上げることによって、多面的な生活綴方運動の一様相を明らかにしたい。
著者
山中 正樹
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.右十一-右二十二, 2009-03-31
著者
森田 優己
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.65-77, 2003-03-31

グローバル経済化の進展によって,地方の公共交通は危機に瀕している。規制緩和政策の下,交通事業者の撤退をはばむものはなく,国民の交通権を守るべき国は後景に退き,その役割は,地方自治体に重くのしかかっている。地方自治体には,地域住民の交通権を守るべく,地域特性に応じた対応策をたてることが期待される。しかし,地方自治体には,地域交通政策の立案・実施に必要な権限も財源もないのである。このような状況下において,鉄道の活用を地域交通政策の柱として位置づけたのが,北勢線沿線自治体である。本稿では,近鉄による北勢線廃止の申し出から地方自治体による存続決定に至る過程を検証することによって,グローバル経済下における地方自治体の地域交通政策の課題を整理した。
著者
寺島 徹
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.254-242, 2006-03-31

従来、近世中期から後期の仮名遣い研究において、採り上げられることのなかった俳諧の仮名遣いについて、蕪村・暁台・也有の真蹟資料をもとに調査する。定家仮名遣い、歴史的仮名遣い、および近世通行の仮名遣いの観点から、それぞれの使用度を探ることで、江戸中期の俳人に共通する仮名遣いの規範意識の有無について考察し、その傾向について相対化する。当時は、国学研究が勃興した時代であったにもかかわらず、蕪村においては、歴史的仮名遣いとは異なる近世通行的な仮名遣いが行われていたことがわかる。一方、暁台は、俳諧活動をはじめた宝暦・明和期は、定家仮名遣いを使用する色彩がつよいものの、晩年の句合評や新出の折手本などの自筆資料を参看すると、天明期以降は、国学の気運の高まりの中、歴史的仮名遣いに近づく態度が看取される。作法に拘泥しない磊落な蕪村の志向と、世の趨勢に敏感な暁台の姿勢の一端が仮名遣いの側面からもうかがえる。
著者
酒井 倫夫 加藤 あや美
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.73-82, 2007

二十世紀半ばまで英文法の言語学に基づく研究は,出版された文献を資料として,記述的妥当性を中心に置いた所謂文献的(Philological)な記述を重視する研究であった。世紀半ばにNoam ChomoskyによりSyntactic Structures(1957:Mouton)が公刊されて以来,緻密で,より精緻な説明的妥当性を持つ文法研究が統語論的研究分野の中心に据えられ,文の生成の機序に関わる研究,つまり,生成文法理論に基づく研究が主流となっていった。本研究は,統語論研究分野のひとつの主題である動詞句に関わる動詞補文の構造を,精緻な生成文法理論的研究を中心にして考察しようとするものである。
著者
大澤 伸雄
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.29-39, 2006-03-31

この小論は,朝鮮日帝時代の宗教統制の一つとして,1937年に東学党系水雲教に対しての官憲の弾圧の一面を明らかにしようと試みたものである。弾圧の結果,水雲教は閉止させられ,そのまま日本の真宗大谷派東本願寺の末寺となるべく,強制転宗を強要されることになった。内外の資料をもってこの周辺の問題の整理を試みた。それによると,内鮮一体化,文化統治策の中にありながら,偽装改宗であるが,何故真宗大谷派であったのかという問いに対する答えの一端が明らかになった。