- 著者
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松良 俊明
- 出版者
- 京都教育大学
- 雑誌
- 京都教育大学環境教育研究年報 (ISSN:09193766)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.55-65, 1993-03-31
かつて昆虫採集はわが国の理科教育において大きな比重を占めてきた。これは生物教育の方法論において,文部当局が標本収集ということを重視してきたことが大きい。いわば昆虫採集を政府自らが奨励してきたのであり,この方針はじつに明治初期から戦後10数年後まで続いたのであった。しかし,昭和33年(1958)に出された「学習指導要領」から,文部省の方針は採集重視から観察重視へと一変し,その結果昆虫採集は今日ほとんど顧みられなくなった。だが最近再び昆虫採集を見直す動きがあり,その是非をめぐって論争が起っている。これまで提出されてきた賛成派・反対派の論点を整理するとともに,昆虫採集には一定の利点が存在するが,それを上回る問題点も認められるとする筆者の考えを提示した。