- 著者
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伊藤 守
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.4, pp.727-747, 2007-03-31
- 被引用文献数
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電子メディアに媒介された情報とイメージの移動は, ローカル, ナショナル, リージョナル, そしてグローバルな空間が重層化したメディアスケープを構成し, 従来の「ナショナル・メディア」を前提とした研究視座では捉えきれない社会文化的過程を生み出した.<BR>本稿の目的は, メディアのグローバル化を解明する上で重要な三つの視点-文化帝国主義, カルチュラル・スタディーズ, 文化の地政学的なアプローチを検討し, 今後の実証研究を進めるための論点を提示することにある.アメリカのメディア産業が地球規模で文化の画一化をもたらすと主張した文化帝国主義の仮説を支持することはもちろんできない.だが, 表象の政治学の問題に直接かかわる, 情報フローの圧倒的な不均衡性が今でも存在していることを考えるならば, その政治経済学的アプローチの重要性は今日でも失われていない.他方, 文化帝国主義を批判したカルチュラル・スタディーズは, 文化人類学や批判的地理学との対話を通じて, メディアスケープの構築を通じた消費実践の政治性を問題化する文化の地政学的な視点を提示している.このアプローチから, メディアのグローバル化がローカルな空間からグローバルな空間への連続的な拡張ではなく, それぞれの空間の間には対立や包摂といった矛盾や非同型的な関係が生成していること, 複雑に折り重なったメディアスケープの構築と相関するかたちで, 民族や宗教やジェンダーを異にする多様なオーディエンスがそれぞれ独自の「メディア・ランドスケープ」を編制していることが明らかにされつつある.この視座をより精緻化していくためには, マクロな構造に規定されたメディアスケープ内部の対抗や包摂の関係と, オーディエンスが布置化された場の歴史的規定性との相互作用を視野に入れることが必要であり, そのことを通じて現実のメディアのグローバル化の複合的な分析を一層進めることが可能となるだろう.