著者
和崎 聖日
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.458-482, 2007-03-31

本稿は、首都タシュケントの「乞食」自身の体験を記述・分析・考察することにより、ペレストロイカとソ連解体(以下、体制転換)というウズベキスタン社会全体における大きな構造転換と都市民衆の微細な生活営為とを結んで論じることを目的とする。体制転換後のウズベキスタンでは、主に資本主義市場経済への移行に伴うマクロな構造的変化によって、「新しいウズベク人」と呼ばれる富裕層が誕生する一方、数多くの人々が突然の貧困と生活水準の低下を経験している。そうしたなか、人々は、主に親族や近隣住民たちとの間で、互助講や私的譲渡など相互扶助の網の目を維持・形成・拡大することによって、現金を決定的に欠いた厳しい現実に対処している。しかしながら、そうした生活営為の網の目から漏れた存在として、現実に「乞食」は存在する。加えて「乞食」は、ソヴィエト時代には社会主義政策のもと原則として禁止され、時に逮捕対象とさえなっていた存在であったが、現在では体制転換に伴うイデオロギー転換によって解禁された資本と宗教の接点に位置する存在として登場している。なぜなら「乞食」は、時代的な諸変化に適応できなかった経済的「敗者」だが、1989年の公式な「反イスラーム政策の停止」を大きな契機として広範に再生した宗教により、その正当性を補うことを可能としている存在だからである。本稿は、タシュケントの「乞食」の生活世界を検討することにより、ウズベキスタンにおける現在の貧困と都市社会におけるイスラーム再生の関わりを示し、都市下層の人々にとってのより日常的な共同世界のあり方を検討する。

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こんな論文どうですか? ポスト・ソヴィエト時代のウズベキスタンの「乞食」 : 都市下位文化におけるイスラームと共同性(和崎 聖日),2007 http://id.CiNii.jp/aUByL

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