- 著者
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赤羽 義章
伊藤 光史
- 出版者
- 日本味と匂学会
- 雑誌
- 日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.117-128, 2007-08
日本海側の広い地域に種々の水産発酵食品が存在しているが、福井県の沿岸や周辺の内陸部ではマサバのへしこやなれずしが伝統的に作られてきた。へしこはマサバを塩漬にした後、これを米糠と合わせて漬け込み、6ヶ月以上発酵させて作る。この地方のなれずしには2種類あり、塩出ししたへしこを原料に用いるものと、生マサバを原料に用いるものがある。後者は、マサバを塩漬けした後、米飯と合わせて、夏期を経て4ヶ月以上発酵させて作る。近年、これらの発酵食品の生産量は増加の傾向にある。へしことなれずしとは製造法が違うだけでなく、呈味の点でもかなり大きく異なる。なれずしは比較的低塩分であり、へしこはかなり高塩分で作られる食品であるが、へしこを多く消費するこれらの地域に高血圧その他の健康障害が多いという報告はない。これらの発酵食品が長年存在してきた背景には、なんらかの食品機能が関係しているのではないかと考えた。生マサバを用いてへしこと後者タイプのなれずしを調製し、一般成分やエキス成分などの変化を調べた。その結果、製品中に多量の遊離アミノ酸や有機酸などの呈味成分に加えて、ペプチドが多量に蓄積することが分かったので、これら食品のエキスを高血圧自然発症ラット(SHR)に投与し、血圧に対する影響についても検討した。