著者
長谷川 孝治
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.91-103, 2007-03-15

本研究では,個別的自己評価が自尊心に及ぼす影響過程に対して,重要性と他者からの評価が調整要因として機能するかが検討された。さらに,反映的自己評価は個別的自己評価や他者からの評価に代わって,自尊心に影響を与えるかどうかについても検討された。分析の結果,まず,個別的自己評価と重要性と他者からの評価が自尊心に及ぼす影響過程については,優しさに関して他者からの評価と重要性の交互作用が見出された。優しい自分というものに対して重要だと認知している場合には,他者からの評価の高さによって自尊心レベルが影響を受けることが示唆された。また,反映的自己評価と重要性と他者からの評価が自尊心に及ぼす影響過程については,運動能力と知性に関して3要因の交互作用が見出された。両者とも重要性を高く評価している場合には,他者からの評価が低く,反映的自己評価も低い場合に最も自尊心が低下するという知見が得られた。これは,自尊心が他者からの拒絶を検知するメーターであるというソシオメーター仮説を支持するものである。最後に,個別的自己評価と重要性と反映的自己評価が自尊心に及ぼす影響過程については,外見に関して3要因の交互作用が見出された。外見に関して重要性を高く認知しており,友人からの反映的自己評価が低く,個別的自己評価も低い場合には自尊心が低くなることが示された。以上の結果から,自尊心の形成要因について考える際,従来指摘されてきた,個別的自己評価とその重要性だけではなく,他者からの評価や反映的自己評価を考慮する必要があることが示唆された。

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