著者
長谷川 孝治 宮田 加久子 浦 光博
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-56, 2007

This study examined the mutual influence processes between self-appraisal on the Internet and actual self-appraisal. Specifically, we researched the discrepancies in each self-evaluation, and how the degree of those discrepancies related to mental health. In a forum on the Internet, a survey with a two-wave panel design was conducted on the Web for mothers with pre-school children who were exchanging childcare information. At the time of each investigation, the actual self-appraisal (SA), the reflected self-appraisal (RSA: participants infer how a significant other evaluates them), the reflected self-appraisal on the Net (RSA-N: participants infer how a significant other in the forum in which they participate evaluates them), and mild depression were measured as an index of mental health. The result showed that the discrepancy betweerl SA and RSA-N was significantly larger than the discrepancy between SA and RSA. We further found that the level of the RSA-N score was significantly lower than that of RSA or SA. However, depression was not influenced by the lowness of the RSA-N score or the discrepancy between SA and RSA-N, but was instead influenced by the lowness of the SA score or the discrepancy between SA and RSA. Moreover, Path analysis found the self-process on the Internet. Specifically, Time 1 SA affected Time 2 RSA; in turn, RSA correlated with RSA-N at Time 2. These results suggested that the self-appraisal on the Internet was formed based on actual self-appraisal by using the Internet about an actual problem.
著者
長谷川 孝治
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1710, (Released:2018-04-12)
参考文献数
37

本研究の目的は,スポーツボイスと呼ばれるボイストレーニング・プログラム(SVP)に参加することによって,高齢男性の心理的健康と配偶者とのコミュニケーションが促進されるかを検討することである。SVPに参加した高齢男性と配偶者を実験群として,開始前(T1),終了直後(T2),その3ヶ月後(T3)の3波のダイアドパネル調査を実施するとともに,類似した活動をする統制群と比較することで,準実験での検討を行った。共分散分析の結果,T2では,実験群の高齢男性は統制群に比べて,自尊心と配偶者からの反映的自己評価が高く,心理的健康が良好になった。さらに,実験群の配偶者は統制群に比べて,夫のコミュニケーション態度の推測が良好になった。また,パス解析によって,このSVPの効果が,集団アイデンティティ(ID)を高め,それが自尊心を仲介して,心理的健康を規定するプロセスが示された。T3では,全体的には,SVPの効果は消失した。ただし,T3において,実験群では,集団アイデンティティが高いほど,参加者および配偶者の心理的健康が高く,コミュニケーション態度も良好であった。これらの結果から,SVPは集団アイデンティティを高める形で,高齢男性の心理的健康を短期的に高める効果を持つことが明らかにされた。
著者
長谷川 孝治 小向 佳乃
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 (ISSN:13422790)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.71-82, 2019-03-15

本研究は,Twitter のフォロワーに対する類似性認知が他者への不寛容性を促進させるのかを検討することを目的として行われた。インターネット調査会社のモニター127名に対するWeb 調査の結果,フォロワーに対する類似性認知が高いほど,彼/彼女らに対する不寛容性も高いことが示された。また,この傾向は,孤独感の高さや自己肯定感の低さによって,調整されていた。すなわち,孤独感が高い人や自己肯定感が低い人は,フォロワーに対する類似性を高く認知するほど,それらの人々と意見の食い違いが生じた際に,不寛容性が高くなることが示された。さらに,そのような際に,フォローを解除したり,ミュートしたりする拒否行動をとるのは,不寛容性が高い人であることも示された。これらのことから,SNSを通してコミュニケーションが円滑になる反面,そこでの同質性の追求が,他者に対する寛容性を下げることにつながることが示唆された。
著者
長谷川 孝治 小向 佳乃
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-82, 2019-03-15

本研究は,Twitter のフォロワーに対する類似性認知が他者への不寛容性を促進させるのかを検討することを目的として行われた。インターネット調査会社のモニター127名に対するWeb 調査の結果,フォロワーに対する類似性認知が高いほど,彼/彼女らに対する不寛容性も高いことが示された。また,この傾向は,孤独感の高さや自己肯定感の低さによって,調整されていた。すなわち,孤独感が高い人や自己肯定感が低い人は,フォロワーに対する類似性を高く認知するほど,それらの人々と意見の食い違いが生じた際に,不寛容性が高くなることが示された。さらに,そのような際に,フォローを解除したり,ミュートしたりする拒否行動をとるのは,不寛容性が高い人であることも示された。これらのことから,SNSを通してコミュニケーションが円滑になる反面,そこでの同質性の追求が,他者に対する寛容性を下げることにつながることが示唆された。
著者
中島 健一郎 礒部 智加衣 長谷川 孝治 浦 光博
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.122-131, 2010 (Released:2010-02-20)
参考文献数
30
被引用文献数
3 5

本研究の目的は次の2つである。ひとつは,文化的自己観と集団表象(common identity group vs. common bond group: Prentice, Miller, & Lightdale, 1994)の関連を検証することである。もうひとつは,この関連が個人の経験したストレスフルイベントの頻度によってどのように変動するか検討することである。そのために本研究では大学1年生を対象とする縦断調査を行った。その結果,独自に作成した集団表象尺度が想定どおりの2因子構造であり,信頼性も許容できる範囲であることが示された。加えて,予測されたように,相互協調性とcommon bond group得点に正の関連があり,common bond group得点において文化的自己観とストレスフルイベントの経験頻度の交互作用効果が認められた。相互協調的自己観が優勢な個人の場合,ストレスフルイベントの経験頻度が少ない群よりも多い群においてcommon bond group得点が高いのに対して,相互独立的自己観が優勢な個人の場合,これとは逆の関連が示された。しかしながら,common identity group得点において予測された効果は認められなかった。この点に関して,個人の集団表象と内集団の特徴との一致・不一致の観点より考察がなされた。
著者
長谷川 孝治
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.156-177, 1993-04-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
163
被引用文献数
2 2

In Europe the study of the history of cartography has a long tradition that dates back to the Renaissance, but its establishment as an independent science had to await the works of L. Bagrow and others since the 1930s. During the ensuing fifty years, a great effort has been devoted to organizing an academic and social framework, including publishing general histories of cartography and facsimiles, and founding the academic society Imago Mundi. During the 1980s, paradigmatic changes occurred in the view and methodology of study in this field. These changes were initiated by P. D. A. Harvey's The History of Topographical Maps and particularly by Concepts in the History of Cartography by M. J. Blakemore and J. B. Harley, both works published in 1980.In this paper the contemporary Anglo-American trends in the study of the history of cartography after 1980 are summarized according to the categories of iconology, context, and social history.1. History of Cartography as IconologyVarious methods of interpreting messages conveyed by means of icons and pictures embedded in maps have been employed in the study of the history of cartography and historical geography. In recent studies of the history of cartography, the analysis of animals (W. George 1978), heraldry (R. V. Tooley 1983), portraits (G. Schilder 1985, P. Barber 1990) and other icons found in maps, as well as of the typology of cartographic symbols and legends (C. Delano Smith 1988), has continued.A synthetic method to consider the map as a whole, not to analyze each element on the map or its border separately, was proposed by Harley (1980 & 1983). He used E. Panofsky's iconology as a framework and suggested that a cartographic parallel existed.Attempts to interpret the whole work as a single icon, semantically or symbolically, have often been limited to the title-page of an atlas, rather than considering the maps themselves. Although Tooley (1975) had published a collection of title-pages of atlases, it was R. W. Shirley (1987 & 1988) who systematically organized all of them. Nevertheless these title-pages are categorized only by their format and content, and there is no in-depth interpretation of any individual map. For instance, the title-page of the Theatrum Orbis Terrarum by A. Ortelius, the first modern atlas, should be seen as a stronger spatial expression of the Darwinian paradigm than of the relation between those dominating and dominated.2. History of Cartography as ContextBeyond the iconographic interpretation, a contextual approach to consider the individual map in the context of the historical circumstances in which it was produced has been developed. The cultural context, or the relationship between the invention of maps in early modern Europe and the corresponding historical and cultural circumstances, especially those of art, has been discussed by R. Rees (1980), S. Y. Egerton (1987) and S. Alpers (1987). All of these credit the impact of the revival of the Ptolemaic grid system to art.In the political and social context, Harley (1983) applied his method to the meaning and function of the various scale maps under the Tudors and developed cartographic semantics. The county maps of Saxton, for example, were prepared with such things in mind as the bureaucracy, defence, local administration and decoration, and they have been interpreted as symbolizing the county community and serving a social function as the identity of the county and as an intellectual discovery of England. Harley (1988) later employed M. Foucault's concept of power-knowledge and episteme to interpret the relationship between the maps and the ideology in them. This work attempted to divide the empty space in maps, interpreted as silence, into intentional and unintentional silence, and to investigate in particular the role of political, religious and social ideology in the unintentional silence.
著者
辻 竜平 長谷川 孝治 相澤 真一 小泉 元宏 川本 彩花
出版者
信州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

クラシック音楽祭を題材に文化資本と社会関係資本との関連性について検討した.また,その主題と関連する芸術至上主義的態度,音楽祭への参加と人々のアイデンティティや精神的健康についても検討した.主な調査としては,「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」の一般のオーディエンスを対象とした調査と,中学生向けのプログラムに参加した中学生を対象としたパネル調査を行った.中学生調査では,発達過程の状態を知ることができる.主な結果として,クラシック音楽への初期接触と,クラシック音楽の好み,および,地域活動や地域への評価との間に関係があることが明らかになった.
著者
長谷川 孝治
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.91-103, 2007-03-15

本研究では,個別的自己評価が自尊心に及ぼす影響過程に対して,重要性と他者からの評価が調整要因として機能するかが検討された。さらに,反映的自己評価は個別的自己評価や他者からの評価に代わって,自尊心に影響を与えるかどうかについても検討された。分析の結果,まず,個別的自己評価と重要性と他者からの評価が自尊心に及ぼす影響過程については,優しさに関して他者からの評価と重要性の交互作用が見出された。優しい自分というものに対して重要だと認知している場合には,他者からの評価の高さによって自尊心レベルが影響を受けることが示唆された。また,反映的自己評価と重要性と他者からの評価が自尊心に及ぼす影響過程については,運動能力と知性に関して3要因の交互作用が見出された。両者とも重要性を高く評価している場合には,他者からの評価が低く,反映的自己評価も低い場合に最も自尊心が低下するという知見が得られた。これは,自尊心が他者からの拒絶を検知するメーターであるというソシオメーター仮説を支持するものである。最後に,個別的自己評価と重要性と反映的自己評価が自尊心に及ぼす影響過程については,外見に関して3要因の交互作用が見出された。外見に関して重要性を高く認知しており,友人からの反映的自己評価が低く,個別的自己評価も低い場合には自尊心が低くなることが示された。以上の結果から,自尊心の形成要因について考える際,従来指摘されてきた,個別的自己評価とその重要性だけではなく,他者からの評価や反映的自己評価を考慮する必要があることが示唆された。
著者
長谷川 孝治
出版者
信州大学人文学部
雑誌
人文科学論集 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
no.42, pp.53-65, 2008-03

本研究では、抑うつ者における下方螺旋過程が低自尊心者についても同様に見られるかどうかを検討することである。抑うつ傾向の高い人は、対人関係の中で自己価値に対する不安を感じたとき、他者が本当に自分のことを大切に思ってくれているかどうかを恋人や友人といった重要他者に対して繰り返し確認するという安心さがし行動をとるとされる。安心さがしの規定因に関する先行研究から考えると、同様の行動が低自尊心者についても見られると予測された。大学生に對するパネル調査の結果、低自尊心者が親密な同性の友人に対して安心さがしを行うほど、その友人から拒絶されているという認知が高まる(肯定的に評価されているという認知が低下する)ことが示された。さらに、安心さがし行動の規定因に関する検討の結果、大学生活に特有にネガティブ・ライフイベントを多く経験しているほど、安心さがしを行う意図が高まり、実際に安心さがしを行う傾向が強くなることが示された。これらの知見に関して、反映的自己評価の機能の観点から考察された。
著者
長谷川 孝治 小向 佳乃
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities (ISSN:24238910)
巻号頁・発行日
no.6, pp.71-82, 2019-03

本研究は,Twitter のフォロワーに対する類似性認知が他者への不寛容性を促進させるのかを検討することを目的として行われた。インターネット調査会社のモニター127名に対するWeb 調査の結果,フォロワーに対する類似性認知が高いほど,彼/彼女らに対する不寛容性も高いことが示された。また,この傾向は,孤独感の高さや自己肯定感の低さによって,調整されていた。すなわち,孤独感が高い人や自己肯定感が低い人は,フォロワーに対する類似性を高く認知するほど,それらの人々と意見の食い違いが生じた際に,不寛容性が高くなることが示された。さらに,そのような際に,フォローを解除したり,ミュートしたりする拒否行動をとるのは,不寛容性が高い人であることも示された。これらのことから,SNSを通してコミュニケーションが円滑になる反面,そこでの同質性の追求が,他者に対する寛容性を下げることにつながることが示唆された。
著者
長谷川 孝治 宮田 加久子 浦 光博
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.45-56, 2007-08-01 (Released:2017-02-08)

This study examined the mutual influence processes between self-appraisal on the Internet and actual self-appraisal. Specifically, we researched the discrepancies in each self-evaluation, and how the degree of those discrepancies related to mental health. In a forum on the Internet, a survey with a two-wave panel design was conducted on the Web for mothers with pre-school children who were exchanging childcare information. At the time of each investigation, the actual self-appraisal (SA), the reflected self-appraisal (RSA: participants infer how a significant other evaluates them), the reflected self-appraisal on the Net (RSA-N: participants infer how a significant other in the forum in which they participate evaluates them), and mild depression were measured as an index of mental health. The result showed that the discrepancy betweerl SA and RSA-N was significantly larger than the discrepancy between SA and RSA. We further found that the level of the RSA-N score was significantly lower than that of RSA or SA. However, depression was not influenced by the lowness of the RSA-N score or the discrepancy between SA and RSA-N, but was instead influenced by the lowness of the SA score or the discrepancy between SA and RSA. Moreover, Path analysis found the self-process on the Internet. Specifically, Time 1 SA affected Time 2 RSA; in turn, RSA correlated with RSA-N at Time 2. These results suggested that the self-appraisal on the Internet was formed based on actual self-appraisal by using the Internet about an actual problem.
著者
長谷川 孝治 浦 光博 前田 和寛 浦 光博 前田 和寛
出版者
信州大学
雑誌
人文科学論集. 人間情報学科編 (ISSN:13422782)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.53-63, 2009-03-15

本研究では,低自尊心者における下方螺旋過程に対する友人関係の進展段階の調整効果が検討された。長谷川(2008)は,低自尊心者の下方螺旋過程の存在について明らかにした。すなわち,低自尊心者は,友人が本当に自分のことを大切に思ってくれているかどうかを繰り返し確認するという安心さがし行動をとり,その結果,その友人から拒絶されているという認知が高まる(肯定的に評価されているという認知が低下する)ことが示された。本研究では,このような不適応な相互作用プロセスは,低自尊心者が二者関係の進展段階を考慮していないために生じると予測し,検討を行った。パス解析による検討の結果,低自尊心者は,つきあいの浅い友人に対して安心さがしを行うほど,友人からの反映的自己評価が低下することが示された。また,親しい友人に対して,低自尊心者が安心さがしを行っても,反映的自己評価の低下は見られなかった。高自尊心者は,友人の親しさに関わらず,安心さがしを行うことが反映的自己評価を下げることはなかった。これらの結果について,アイデンティティー交渉の観点から考察された。
著者
長谷川 孝治 浦 光博 前田 和寛
出版者
信州大学人文学部
雑誌
人文科学論集人間情報学科編
巻号頁・発行日
vol.43, pp.53-63, 2009-03-15 (Released:2015-09-18)

本研究では,低自尊心者における下方螺旋過程に対する友人関係の進展段階の調整効果が検討された。長谷川(2008)は,低自尊心者の下方螺旋過程の存在について明らかにした。すなわち,低自尊心者は,友人が本当に自分のことを大切に思ってくれているかどうかを繰り返し確認するという安心さがし行動をとり,その結果,その友人から拒絶されているという認知が高まる(肯定的に評価されているという認知が低下する)ことが示された。本研究では,このような不適応な相互作用プロセスは,低自尊心者が二者関係の進展段階を考慮していないために生じると予測し,検討を行った。パス解析による検討の結果,低自尊心者は,つきあいの浅い友人に対して安心さがしを行うほど,友人からの反映的自己評価が低下することが示された。また,親しい友人に対して,低自尊心者が安心さがしを行っても,反映的自己評価の低下は見られなかった。高自尊心者は,友人の親しさに関わらず,安心さがしを行うことが反映的自己評価を下げることはなかった。これらの結果について,アイデンティティー交渉の観点から考察された。