著者
杉谷 修一
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-50, 2007-02-28

子どもの遊びの特徴として、ダイナミックな相互行為境界の構成が挙げられる。記述された遊びのやりとりをシークエンスに沿って分析する方法がしばしば採用される。シークエンスは会話の参加者間で行われる発話の交換であり、それは相互行為の進行にとって特定の機能を果たすため、トランスクリプトは単一の焦点を持つ会話や行動のやりとりとみなされてしまう。エピソードは相互行為の境界がどのように構成されるのかという問題に非常に重要な意味を持つと考えられる。本論文ではエピソードが遊びの中でどのように利用されているかを検討した。エピソードは単一の主題によって切り取られるひとまとまりの相互行為であるが、遊びの事例を検討した結果、必ずしもそうではないことがわかった。複数の主題が連続して継続される場合もあるし、またその主題が潜在的なこともある。このようなエピソードの複雑な構造が相互行為の境界が変動する契機として重要な関与をしている。もうひとつの特徴は、過去の一時点に位置づけられるエピソードを現在進行中の相互行為に取り込むというやり方である。このように相互行為の資源として取り込まれるエピソードを単位エピソードと呼ぶ。遊びの中では単位エピソードは単なる回想の対象ではない。それは冗談や悪ふざけの材料であり、さらには単位エピソードの改変を通じて参加者の社会関係への影響を及ぼすものにもなりえる。単位エピソードを利用することで、相互行為の枠組みは大きく変化する。それは相互行為における開放性の問題ともかかわってくる。開放性は社会的なものと空間的なものに分けることができる。前者は遊びが通常よりも広い人間関係を潜在的に受け入れる傾向があることを意味する。後者は間違いの少ない相互行為を営むには不利なほど拡大した範囲で遊びが行われることを意味している。相互行為としての遊びに影響を与える単位エピソードと開放性の関係を明らかにすることが今後の課題である。

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子どもの遊びにおけるエピソードの利用と社会的相互行為の境界構成〜PDFあり。遊びを記述するには会話の相互性−スクリプト分析よりも、エピソード分析がよいことを論じている。事例などをふんだんに使いよく練られた構成となっている。 http://t.co/fgT5EwA

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