著者
花井 しおり
出版者
人間環境大学
雑誌
(ISSN:1348124X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-39, 2007-03-31

万葉集巻九に、「田辺福麻呂之歌集」出の、「過_二足柄坂_一、見_二死人_一作歌一首(足柄の坂に過きるに、死人を見て作る歌一首)」(9・一八〇〇)と題される歌がある。万葉集において、題詞に「見(視)_二死人(屍)_一」と見える歌は、いわゆる行路死人歌と称される。行路死人歌の歌群において、当該歌は、死人それ自体の描写が詳細であること、および死人の内面にも立ち入り、心情を想像することにおいて個性的である。本論では、そのような表現が、福麻呂に特徴的な見方である「直目」に見ること-単に「直に」見るということではなく、相手に価値的な「直に」というあり方で逢い、渾身の力で見ること-に由来すると解されることを論じる。

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