著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.8-26, 2007-10-20

近時,日本では,凶悪犯罪の増加など治安の悪化が大きな社会問題として取り上げられている.マスコミは,凶悪犯罪が起こるたびに,認知件数や検挙率といった警察統計を取り上げて危機感をつのらせる.しかし,認知件数は,犯罪指標の一つではあるが,警察に事件が届けられ,警察が犯罪として認知したものを計上した行政機関の受理統計であり,犯罪発生をそのまま反映したものではない.本稿では,最初に犯罪被害調査の特徴を概観した後に,筆者が平成16年度の科学研究費補助金(基盤研究B「治安・犯罪対策の科学的根拠となる犯罪統計(日本版犯罪被害調査)の開発」)の交付を受けて2006年に実施した犯罪被害調査の結果を報告する.まず,犯罪被害率について過去に行われたICVSの結果等とも比較し,犯罪被害調査から見た日本の犯罪情勢について報告し,さらに,犯罪被害調査の妥当性・信頼性を確認する意昧から,調査方法による回収率・回答パターンの変化,更には回収率が低下することによる調査結果への影響に焦点を当てた報告を行う.本犯罪被害調査では,調査対象者(サンプル)を二つのグループに分け,一つのグループについては,従来から日本の世論調査等でよく用いられている訪問面接方式によって調査を実施し,もう一つのグループについては訪問留置き方式によって調査を実施した.これは,近時,個人情報に対する国民の意識の高まり等によって,世論調査・社会調査の実施環境が著しく悪化し,調査の回答率が低下したことに加えて,調査実施に対する苦情も増大しつつある現実を踏まえ,調査方法による回収率等への影響を調べるためのものである.さらに,回収率の低下が調査の信頼性にどのような影響を与えるのかを検討するため,無回答者に対して,質問項目を絞った簡易質問紙を郵便で送付する追跡(二次)調査を実施し,その結果を訪問調査の結果と比較した.

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