著者
津島 昌弘 浜井 浩一 津富 宏 辰野 文理 新 恵里 上田 光明 我藤 諭 古川原 明子 平山 真理
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

EUの女性に対する暴力被害調査を踏襲した本調査は、近畿圏在住の女性を対象に、2016年に実施された。重大な発見は、日本では、加害者が非パートナーの場合、一定程度の女性が被害を警察に通報しているが、加害者がパートナーの場合、警察に通報した女性は皆無であった(EUでは加害者がパートナーと非パートナーとでほとんど差がない)ことである。これは、日本では、DVや親密圏で起こった暴力は表面化しにくいことを示唆している。家族や地域が弱体化するなか、親密圏で起きた当事者間の紛争解決において、公的機関の介入が不可避となっている。近隣の人が異変を見つけたなら、警察や支援団体に相談することが重要である。
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.10-26, 2004-10-18 (Released:2017-03-30)
被引用文献数
3

2003年に実施された衆議院議員選挙において,主要政党のほとんどが,犯罪・治安対策を重要な争点として取り上げるなど,日本において,現在ほど,犯罪や治安が大きな社会問題となったことはない.世論調査の結果を待つまでもなく,多くの国民が,疑問の余地のない事実として,日本の治安が大きく悪化していると考えている.本稿では,これを「治安悪化神話」と呼ぶ.本稿では,まず最初に,日本の治安悪化神話の根拠となっている犯罪統計を検証する.そして,治安悪化を示す警察統計の指標は,警察における事件処理方針の変更等による人為的なものであり,人口動態統計等を参照すると,暴力によって死亡するリスクは年々減少しつつあること,つまり,治安悪化神話は,必ずしも客観的な事実に基づいていないことを確認する.次に,治安悪化神話の生成過程について,マスコミによる凶悪犯罪の過剰報道,それによって作られたモラル・パニックを指摘しつつ,さらに,一過性であるはずの治安悪化言説が,マスコミ,犯罪被害者支援運動と支援者(advocates),行政・政治家,専門家の共同作業を通して,単なるパニックを超えて,社会の中に定着していく過程を分析する.
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.10-26, 2004
被引用文献数
2

2003年に実施された衆議院議員選挙において,主要政党のほとんどが,犯罪・治安対策を重要な争点として取り上げるなど,日本において,現在ほど,犯罪や治安が大きな社会問題となったことはない.世論調査の結果を待つまでもなく,多くの国民が,疑問の余地のない事実として,日本の治安が大きく悪化していると考えている.本稿では,これを「治安悪化神話」と呼ぶ.本稿では,まず最初に,日本の治安悪化神話の根拠となっている犯罪統計を検証する.そして,治安悪化を示す警察統計の指標は,警察における事件処理方針の変更等による人為的なものであり,人口動態統計等を参照すると,暴力によって死亡するリスクは年々減少しつつあること,つまり,治安悪化神話は,必ずしも客観的な事実に基づいていないことを確認する.次に,治安悪化神話の生成過程について,マスコミによる凶悪犯罪の過剰報道,それによって作られたモラル・パニックを指摘しつつ,さらに,一過性であるはずの治安悪化言説が,マスコミ,犯罪被害者支援運動と支援者(advocates),行政・政治家,専門家の共同作業を通して,単なるパニックを超えて,社会の中に定着していく過程を分析する.
著者
浜井 浩一
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.143-162[含 英語文要旨], 2007

Although Japan traditionally enjoyed a reputation for being one of the most crime-free economically advanced countries in the world, since the late 1990s its crime rates have increased and clear up rate have dropped. It now appears that the Japanese public has lost confidence in the effectiveness of the criminal justice system and is more anxious about safety. The Japanese public now believes that young offenders are becoming increasingly violent and that more and more adolescents are committing serious offenses. This view stems from a belief that there has been a breakdown in family life and that as a consequence, young people have become more amoral. In response, the Japanese government is trying to overhaul the national education curriculum, with a major focus on imposing and improving public morality. However, a careful examination of crime statistics shows that the perception of ever-increasing youth crime is groundless. There has been no decline in the age of youngest offenders. On the contrary, the average age of young offenders has risen, partly because the job market for young people, especially those without skills and/or a high school diploma, has become tight. The delinquency rate in Japan used to peak at age of 15 and then drop sharply. Most juvenile delinquents had ceased to offend by the age of 20. There is a large gap between what the public believes about youth offenses and the reality. The measures adopted by the government to prevent youth offenses, mainly focusing on morality, are based on a kind of stereotypical young offender. If the government continues to ignore the real problem, i. e., the shrinking job market for unskilled young people, it will create a self-fulfilling prophecy of future violent offenses by young people.
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.53-77, 2013-10-15 (Released:2017-03-31)
被引用文献数
1

本稿は,2002年をピークとする一般刑法犯認知件数の急増・急減,特にその大きな原動力となった街頭犯罪認知件数の変動を分析すると同時に,近時,先進国の多くで犯罪が減少している状況を踏まえ,より長期的な視点から犯罪を減少させている要因を探ってみたい.言うまでもなく,認知件数は,様々なルートから警察に届けられた事件の中から警察が犯罪として認知した事件の件数を計上したものである.事件処理のスクリーニングが一定であれば,その数字は発生する犯罪の増減を反映する.反面,スクリーニング等の方法を変えると犯罪発生とは関係なく認知件数は増減する.さて,2002年をピークとする認知件数の減少はそのどちらによってもたらされたものだろうか.答えは,その両方である.2003年から街頭犯罪の認知件数の削減が警察評価における数値目標として設定された.街頭犯罪は,対象や手口がわかりやすいため防犯対策をとりやすい.自動販売機の堅牢化によって自動販売機ねらいは急速に減少した.車上ねらいや自転車盗・バイク盗も急減した.同時に,数値目標が一人歩きをして,車上ねらいの数え方を工夫する努力が行われたことも明らかとなった.いずれにしても暗数の少ない殺人等の認知件数や犯罪被害調査などから確実に言えることは,近時,犯罪が減少しているということである.では,殺人などの重大犯罪はなぜ減少しているのか.一つは,少子化の影響が考えられる.犯罪の主な担い手は30歳未満の若者である.若者の人口が減れば犯罪も減ることが予想され,日本でも戦後少子・高齢化の進行とともに犯罪は減少している.また,アメリカの心理学者ピンカーは,さまざまな資料を駆使して,現代人は,人類史上最も暴力の少ない時代に生きていると主張している.ピンカーは,それは種としての人類の進歩によるものであり,私たちの中にある共感や自己統制といった「より良き天使(better angels)」が復讐やサディズムといった「内なる悪魔(inner demons)」を凌駕した結果である主張している.2002年をピークとする認知件数の急上昇・急降下は,街頭犯罪をターゲットとし,数値目標を設定したことによってもたらされたものであり,そこに防犯意識の高まりが一定貢献したことは間違いない.しかし,防犯意識は,警戒心や不信感と表裏一体である.犯罪のない社会が市民を幸福にするとは限らない.認知件数を数値目標にすることの意味をもう一度考えてみるべきであろう.
著者
浜井 浩一 エリス トム
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.67-92, 2008

内閣府等の世論調査によると,現在の日本では,80%を超える人が日本の治安が悪化したと感じ,同じく80%を超える人が死刑制度の存続を支持している.こうした世論や被害者支援団体等に後押しされて,1990年代後半から,日本でも厳罰化が進んでいる.Pratt(2007)のいうPenal Populismの基本は,マスコミを通して語られる市民団体や被害者支援の活動家の体験に基づいた常識的で分かりやすい声によって,司法官僚を含む専門家が刑事政策の蚊帳の外に追いやられた結果,厳罰化が進行することにある.この現象は,現在日本で起きている厳罰化によく似てはいないだろうか.小泉改革以来,力強く,常識的で,分かりやすい解決策がもてはやされるようになった.光市で発生した母子殺害事件は,その事件そのものだけではなく,9年間にわたって続いた公判の様子は,被害者遺族の言葉を通して様々なメディアで報道され,世論の強い支持を背景に,検察官の控訴,上告によって,無期懲役刑判決が破棄され,差し戻し控訴審において死刑判決が下された.この間,治安対策や刑事政策の分野でも,厳罰化に向けた施策が次々と打ち出された.しかし,もともと,Penal Populismは,アメリカのように裁判官や検察官が選挙で選ばれるなど,司法官僚の人事が政治的な影響を受けやすい制度を持っている国で起こりやすい.日本の裁判官や検察官は,司法官僚と呼ばれるように,巨大な官僚機構の一員であり,終身雇用制度のもと人事は政治からほぼ独立している.つまり,国際比較的な観点から見ると,日本は,制度的にみて,Penal Populismの影響に対して最も強い抵抗力を有している国だといえる.このことを前提に,近時の日本の厳罰化の過程を見てみると,Penal Populismとはやや異なった姿が見えてくる.最近の厳罰化に向けた法改正は,刑法,刑事訴訟法の改正や裁判員制度の創設を含めて,厳罰化に向けた量刑等の動きは,市民や被害者遺族の声が大きな原動力となって動き出したものであるが,すべて司法(法務)官僚である検察官を通して実現されたものであり,検察官の権限が縮小された制度改革はほとんどない.日本のPenal Populismの特徴は,司法官僚や刑事法の専門家が抵抗勢力とはならず,むしろ世論と一体となって厳罰化を押し進めた点にある.
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.76-106, 2011-10-31

本稿の課題は,人口動態の変化,つまり少子・高齢化によって犯罪動向がどのように変化し,それに刑事司法制度がどのように対応しているのかを分析した上で,今後,少子・高齢化が更に進行する可能性の高い日本において,刑罰運用を含めた持続可能な刑事政策はいかにあるべきかを検討することにある.結論から言うと,少子・高齢化は,犯罪に対して最も活発な若者が減少し,犯罪に対して最も非活発な高齢者が増加するため,全体としては犯罪減少社会を作り出す.事実,罪種によって多少傾向の違いはあるが,窃盗においても,殺人においても犯罪は若者の減少と共に減少している.その一方で,年齢による犯罪率の変化を示す年齢層別検挙人員を人口比で示した犯罪曲線を詳細に分析してみると,そこには1990年代後半から微妙な変化が認められる.それは,30歳以降において加齢による犯罪の減少傾向が消失したことである.つまり,日本では,30歳を過ぎると犯罪から足を洗えなくなってきているということである.犯罪の背景要因には生活苦や社会的孤立が存在する.少子・高齢化は,消費を衰えさせ経済全体を衰弱させる.1990年代後半における経済不況の原因の一つは少子・高齢化である.つまり,少子・高齢化は,全体としては犯罪を減少させるが,不況を生み出すことで中高年の立ち直りを阻害する一面があるのである.日本の刑事司法は応報を基本とし,累犯加重を機械的に適用する傾向が強く,判決までの段階では犯罪者を更生させるという意識は乏しい.その結果として,万引きや無銭飲食などの高齢犯罪者が増加する中,彼らの多くが,軽微な犯罪の繰り返しで実刑となり,受刑者の高齢化は深刻な状況となっている.少子・高齢化社会において持続可能な刑事政策を実現させるために必要なこと,それは,これまでの「応報型司法」を改め,犯罪者の更生を可能とする「問題解決型司法」を目指すことである.そのために,同じ大陸系刑法の伝統を持ち,日本に次いで人口の高齢化が深刻なイタリアがいかに高齢犯罪者の増加を防止しているのかを参考に刑事司法改革の方向性について考える.
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.53-77, 2013-10-15

本稿は,2002年をピークとする一般刑法犯認知件数の急増・急減,特にその大きな原動力となった街頭犯罪認知件数の変動を分析すると同時に,近時,先進国の多くで犯罪が減少している状況を踏まえ,より長期的な視点から犯罪を減少させている要因を探ってみたい.言うまでもなく,認知件数は,様々なルートから警察に届けられた事件の中から警察が犯罪として認知した事件の件数を計上したものである.事件処理のスクリーニングが一定であれば,その数字は発生する犯罪の増減を反映する.反面,スクリーニング等の方法を変えると犯罪発生とは関係なく認知件数は増減する.さて,2002年をピークとする認知件数の減少はそのどちらによってもたらされたものだろうか.答えは,その両方である.2003年から街頭犯罪の認知件数の削減が警察評価における数値目標として設定された.街頭犯罪は,対象や手口がわかりやすいため防犯対策をとりやすい.自動販売機の堅牢化によって自動販売機ねらいは急速に減少した.車上ねらいや自転車盗・バイク盗も急減した.同時に,数値目標が一人歩きをして,車上ねらいの数え方を工夫する努力が行われたことも明らかとなった.いずれにしても暗数の少ない殺人等の認知件数や犯罪被害調査などから確実に言えることは,近時,犯罪が減少しているということである.では,殺人などの重大犯罪はなぜ減少しているのか.一つは,少子化の影響が考えられる.犯罪の主な担い手は30歳未満の若者である.若者の人口が減れば犯罪も減ることが予想され,日本でも戦後少子・高齢化の進行とともに犯罪は減少している.また,アメリカの心理学者ピンカーは,さまざまな資料を駆使して,現代人は,人類史上最も暴力の少ない時代に生きていると主張している.ピンカーは,それは種としての人類の進歩によるものであり,私たちの中にある共感や自己統制といった「より良き天使(better angels)」が復讐やサディズムといった「内なる悪魔(inner demons)」を凌駕した結果である主張している.2002年をピークとする認知件数の急上昇・急降下は,街頭犯罪をターゲットとし,数値目標を設定したことによってもたらされたものであり,そこに防犯意識の高まりが一定貢献したことは間違いない.しかし,防犯意識は,警戒心や不信感と表裏一体である.犯罪のない社会が市民を幸福にするとは限らない.認知件数を数値目標にすることの意味をもう一度考えてみるべきであろう.
著者
浜井 浩一
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.143-162, 2007-05-31 (Released:2018-07-01)
参考文献数
10

Although Japan traditionally enjoyed a reputation for being one of the most crime-free economically advanced countries in the world, since the late 1990s its crime rates have increased and clear up rate have dropped. It now appears that the Japanese public has lost confidence in the effectiveness of the criminal justice system and is more anxious about safety. The Japanese public now believes that young offenders are becoming increasingly violent and that more and more adolescents are committing serious offenses. This view stems from a belief that there has been a breakdown in family life and that as a consequence, young people have become more amoral. In response, the Japanese government is trying to overhaul the national education curriculum, with a major focus on imposing and improving public morality.However, a careful examination of crime statistics shows that the perception of ever-increasing youth crime is groundless. There has been no decline in the age of youngest offenders. On the contrary, the average age of young offenders has risen, partly because the job market for young people, especially those without skills and/or a high school diploma, has become tight. The delinquency rate in Japan used to peak at age of 15 and then drop sharply. Most juvenile delinquents had ceased to offend by the age of 20.There is a large gap between what the public believes about youth offenses and the reality. The measures adopted by the government to prevent youth offenses, mainly focusing on morality, are based on a kind of stereotypical young offender. If the government continues to ignore the real problem, i. e., the shrinking job market for unskilled young people, it will create a self-fulfilling prophecy of future violent offenses by young people.
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.8-26, 2007-10-20

近時,日本では,凶悪犯罪の増加など治安の悪化が大きな社会問題として取り上げられている.マスコミは,凶悪犯罪が起こるたびに,認知件数や検挙率といった警察統計を取り上げて危機感をつのらせる.しかし,認知件数は,犯罪指標の一つではあるが,警察に事件が届けられ,警察が犯罪として認知したものを計上した行政機関の受理統計であり,犯罪発生をそのまま反映したものではない.本稿では,最初に犯罪被害調査の特徴を概観した後に,筆者が平成16年度の科学研究費補助金(基盤研究B「治安・犯罪対策の科学的根拠となる犯罪統計(日本版犯罪被害調査)の開発」)の交付を受けて2006年に実施した犯罪被害調査の結果を報告する.まず,犯罪被害率について過去に行われたICVSの結果等とも比較し,犯罪被害調査から見た日本の犯罪情勢について報告し,さらに,犯罪被害調査の妥当性・信頼性を確認する意昧から,調査方法による回収率・回答パターンの変化,更には回収率が低下することによる調査結果への影響に焦点を当てた報告を行う.本犯罪被害調査では,調査対象者(サンプル)を二つのグループに分け,一つのグループについては,従来から日本の世論調査等でよく用いられている訪問面接方式によって調査を実施し,もう一つのグループについては訪問留置き方式によって調査を実施した.これは,近時,個人情報に対する国民の意識の高まり等によって,世論調査・社会調査の実施環境が著しく悪化し,調査の回答率が低下したことに加えて,調査実施に対する苦情も増大しつつある現実を踏まえ,調査方法による回収率等への影響を調べるためのものである.さらに,回収率の低下が調査の信頼性にどのような影響を与えるのかを検討するため,無回答者に対して,質問項目を絞った簡易質問紙を郵便で送付する追跡(二次)調査を実施し,その結果を訪問調査の結果と比較した.
著者
浜井 浩一
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.143-162, 2007

<p>Although Japan traditionally enjoyed a reputation for being one of the most crime-free economically advanced countries in the world, since the late 1990s its crime rates have increased and clear up rate have dropped. It now appears that the Japanese public has lost confidence in the effectiveness of the criminal justice system and is more anxious about safety. The Japanese public now believes that young offenders are becoming increasingly violent and that more and more adolescents are committing serious offenses. This view stems from a belief that there has been a breakdown in family life and that as a consequence, young people have become more amoral. In response, the Japanese government is trying to overhaul the national education curriculum, with a major focus on imposing and improving public morality.<br><br>However, a careful examination of crime statistics shows that the perception of ever-increasing youth crime is groundless. There has been no decline in the age of youngest offenders. On the contrary, the average age of young offenders has risen, partly because the job market for young people, especially those without skills and/or a high school diploma, has become tight. The delinquency rate in Japan used to peak at age of 15 and then drop sharply. Most juvenile delinquents had ceased to offend by the age of 20.<br><br>There is a large gap between what the public believes about youth offenses and the reality. The measures adopted by the government to prevent youth offenses, mainly focusing on morality, are based on a kind of stereotypical young offender. If the government continues to ignore the real problem, i. e., the shrinking job market for unskilled young people, it will create a self-fulfilling prophecy of future violent offenses by young people.</p>
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.8-26, 2007-10-20 (Released:2017-03-30)

近時,日本では,凶悪犯罪の増加など治安の悪化が大きな社会問題として取り上げられている.マスコミは,凶悪犯罪が起こるたびに,認知件数や検挙率といった警察統計を取り上げて危機感をつのらせる.しかし,認知件数は,犯罪指標の一つではあるが,警察に事件が届けられ,警察が犯罪として認知したものを計上した行政機関の受理統計であり,犯罪発生をそのまま反映したものではない.本稿では,最初に犯罪被害調査の特徴を概観した後に,筆者が平成16年度の科学研究費補助金(基盤研究B「治安・犯罪対策の科学的根拠となる犯罪統計(日本版犯罪被害調査)の開発」)の交付を受けて2006年に実施した犯罪被害調査の結果を報告する.まず,犯罪被害率について過去に行われたICVSの結果等とも比較し,犯罪被害調査から見た日本の犯罪情勢について報告し,さらに,犯罪被害調査の妥当性・信頼性を確認する意昧から,調査方法による回収率・回答パターンの変化,更には回収率が低下することによる調査結果への影響に焦点を当てた報告を行う.本犯罪被害調査では,調査対象者(サンプル)を二つのグループに分け,一つのグループについては,従来から日本の世論調査等でよく用いられている訪問面接方式によって調査を実施し,もう一つのグループについては訪問留置き方式によって調査を実施した.これは,近時,個人情報に対する国民の意識の高まり等によって,世論調査・社会調査の実施環境が著しく悪化し,調査の回答率が低下したことに加えて,調査実施に対する苦情も増大しつつある現実を踏まえ,調査方法による回収率等への影響を調べるためのものである.さらに,回収率の低下が調査の信頼性にどのような影響を与えるのかを検討するため,無回答者に対して,質問項目を絞った簡易質問紙を郵便で送付する追跡(二次)調査を実施し,その結果を訪問調査の結果と比較した.
著者
佐藤 岩夫 広渡 清吾 小谷 眞男 高橋 裕 波多野 敏 浜井 浩一 林 真貴子 三阪 佳弘 三成 賢次
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、法社会学・法史学・犯罪学専攻の研究者の学際的・総合的な共同研究を通じて、19世紀から現代に至るヨーロッパ各国の司法統計(裁判所組織統計・訴訟統計・犯罪統計等)の歴史的・内容的変遷を詳細に明らかにするものである。研究成果として、ヨーロッパの司法統計の歴史的発展および内容を包括的に明らかにした研究書としては日本で最初のものとなる『ヨーロッパの司法統計I:フランス・イギリス』および『ヨーロッパの司法統計II:ドイツ・イタリア・日本』を刊行した。
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.76-106, 2011-10-31 (Released:2017-03-30)

本稿の課題は,人口動態の変化,つまり少子・高齢化によって犯罪動向がどのように変化し,それに刑事司法制度がどのように対応しているのかを分析した上で,今後,少子・高齢化が更に進行する可能性の高い日本において,刑罰運用を含めた持続可能な刑事政策はいかにあるべきかを検討することにある.結論から言うと,少子・高齢化は,犯罪に対して最も活発な若者が減少し,犯罪に対して最も非活発な高齢者が増加するため,全体としては犯罪減少社会を作り出す.事実,罪種によって多少傾向の違いはあるが,窃盗においても,殺人においても犯罪は若者の減少と共に減少している.その一方で,年齢による犯罪率の変化を示す年齢層別検挙人員を人口比で示した犯罪曲線を詳細に分析してみると,そこには1990年代後半から微妙な変化が認められる.それは,30歳以降において加齢による犯罪の減少傾向が消失したことである.つまり,日本では,30歳を過ぎると犯罪から足を洗えなくなってきているということである.犯罪の背景要因には生活苦や社会的孤立が存在する.少子・高齢化は,消費を衰えさせ経済全体を衰弱させる.1990年代後半における経済不況の原因の一つは少子・高齢化である.つまり,少子・高齢化は,全体としては犯罪を減少させるが,不況を生み出すことで中高年の立ち直りを阻害する一面があるのである.日本の刑事司法は応報を基本とし,累犯加重を機械的に適用する傾向が強く,判決までの段階では犯罪者を更生させるという意識は乏しい.その結果として,万引きや無銭飲食などの高齢犯罪者が増加する中,彼らの多くが,軽微な犯罪の繰り返しで実刑となり,受刑者の高齢化は深刻な状況となっている.少子・高齢化社会において持続可能な刑事政策を実現させるために必要なこと,それは,これまでの「応報型司法」を改め,犯罪者の更生を可能とする「問題解決型司法」を目指すことである.そのために,同じ大陸系刑法の伝統を持ち,日本に次いで人口の高齢化が深刻なイタリアがいかに高齢犯罪者の増加を防止しているのかを参考に刑事司法改革の方向性について考える.
著者
石塚 伸一 赤池 一将 浜井 浩一
出版者
龍谷大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

日本における犯罪者・非行少年処遇は、未だ科学化が進んでおらず、法律家の先入見に支配されている。中央政府主導の犯罪対策には限界があるを自覚した政府は、地方政府や地域社会、NPOとの連携を模索している。他方で、市民は、人間科学にもとづく犯罪問題の解決に期待をしているが、十分な情報をもたないために、扇情的な犯罪報道に聳動して、刑罰ポピュリズムに惑わされる傾向がある。犯罪者・非行少年の処遇において、法と人間科学への期待は大きい。個別分野での科学的実践を通じて、実践的科学としての犯罪学の領域に フィードバックされる諸課題を受け止めながら、法と人間科学の中に新たな犯罪学を構築していく必要がある。