- 著者
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小野 泱
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.893-909, 1978-06-20
- 被引用文献数
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著者は1975〜1977年の2〜5月に帯広市東郊依田台地の下を流れる小沢でブユの採集を行い,C. subcostatumオタルツノマユブユとC. uchidaiウチダツノマユブユにそれぞれ極めて類似した2種類のブユの多数の幼虫,蛹を得た。これらの室内飼育で得た2種の成虫はsubcostatumおよびuchidaiとはそれぞれ別種であり,かつ新種と認めたので本文においてCnetha boldstemta n. sp.オビヒロツノマユブユおよびC. acmeria n. sp. サツナイツノマユブユとして記載した。C. boldstemtaはC. subcostatumに類似しているが,雌雄のgenitalia構造に差がありboldstemtaの雌の胸背に3条の淡色条が認められるがsubcostatumには淡色条がなく,雌の額板の幅,雌雄の脚の形態,色彩,蛹の呼吸糸の幅,繭の形態,幼虫の頭部額板の斑紋,頭部腹面の割目の形態,肛鰓にも明瞭な差異が認められる。C. acmeriaはC. uchidaiに類似しているが,雌雄のgenitalia構造に差があり,繭のdorsal projectionは特異的に極めて長くなっている。また雌の額板の幅,雌雄の脚の形態,色彩,幼虫の頭部額板の斑紋,肛鰓にも差が認められる。C. subcostatumとC. uchidaiの成虫は5月から11月まで見られ,幼虫,踊も道内各地の平野部から山地の林内の小沢からかなり幅広い川で普通に見られるが,C. boldstemtaとC. acmeriaの成虫は平野部の台地下に4〜6月だけ見られる。両新種の幼虫と蛹は融雪期とその前後に,湧水からの小沢にのみ生息しており,この小沢は夏期,秋期には消滅する。両種の雌成虫は吸血するかどうか不明である。