- 著者
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大原 洋一
- 出版者
- 帯広畜産大学
- 雑誌
- 帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.1, pp.79-88, 1980-11-29
この試験は,標高が高く,気温が低く,しかも土壌があまり肥沃でないような環境条件,つまり気象的にも地形的にもアルファルファの生育に適さない自然草地でアルファルファ導入の可能性を明らかにするために実施したものである。試験は1962年から1965年の4年間にわたって実施し,供試品種はナラガンセット,バーナル,デュピイ,イタリー,グリム及びライゾマの6品種である。これらの品種は海抜標高の424m,525m,717mの3カ所に3反覆の試験地を設定して栽培した。その結果を要約するとつぎのごとくである。1.一般に標高が高くなるほど気温が低くなる。生育初年目のアルファルファの生育は低標高の試験地の気温が高かったため高標高の試験地におけるよりも良好であった。このことは播種当初の初年目の生育は気温に対する感応が大きいことを示すものである。しかし,2年目以降の乾物収量では中位標高の試験地のものが他の試験地におけるよりも高いのは肥沃度が他の2カ所よりも高いからである。つまり,アルファルファの乾物収量に地力が大いに影響している。3年目以降になると,きびしい寒さのため冬枯れし,特に高い標高のところでは消滅してしまう。この試験結果から考えアルファルファの生育可能な標高の限界は600〜700m位であり,積算温度(5月1日から9月30日に至る1日の平均気温の合計)の下限は2,000〜2,200℃位に推定される。このようにアルファルファの乾物収量は気象及び土壌条件に左右されることが大きい。2.環境条件のアルファルファの生育に及ぼす感応は品種によって異なるが,供試した6品種の中ではナラガンセットとライゾマが生育期間に低温,濃霧の多い気象,日照時間の少ない環境の下でもっとも適していることが確認された。生育3年目では700m以上の高い標高に導入したアルファルファ品種の多くは冬枯れのため消滅するに至った。3.アルファルファの乾物収量と品種間,標高間,収穫年次間にそれぞれ1%の水準で有意差を示した。また積算温度間に正の相関関係がみられた。以上のごとく,この研究ではアルファルファの永続性を保持し,高い乾物収量をあげる標高の上限は700mであろうと推定された。しかし品種によっては永続性を保ち,冬損に耐える生理的特性をもっているものがある。したがって,このような冷涼な気象,凍結した土壌に耐えるようなアルファルファの育種を行うことも必要であろう。同時に適当な栽培管理を行うことも,このようなきびしい環境条件の下でアルファルファを導入する可能性が実現されるであろう。