- 著者
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中別府 温和
- 出版者
- 宮崎公立大学
- 雑誌
- 宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.1, pp.283-308, 2006
小論の目的は、宗教を理解するために宗教的象徴をめぐる事実を厳密に取り出し、それらとの関連でどこにどのような意味が共有され分有されているかを解明することである。ここでは、ゾロアスター教徒パーシーの聖なる火を材料とし、宗教的意味の残存性と太古性という視点と、宗教的なものの地域や社会による分有という視点から分析を試みた。その結果、(1)聖なる火はその構成過程にアヴェスター時代の要素を保っていること、(2)太陽、月、水、土、樹木、動物(犬、牛、など)などの要素と複合した体系の中で聖性が意味づけられていること、(3)死体および死体悪魔への抵抗と忌避の手段として働いていること、(4)穢れを落とし浄められた状態を確保する手段として意味づけられていること、(5)聖なる火は故人および死者の魂を記念することを目的として作られること、(6)聖なる火を納ある聖火殿の建設ならびに聖なる火を維持するために香木を捧げる儀礼も、故人および死者の魂を記念することを目的にしていること、(7)したがって聖なる火は一度作られたらそれを二つに割ったり、二つの火を一つに統合したりすることはできないこと、(8)聖なる火を共有する主体はそれぞれ異なっていること、が明らかになった。また、(9)聖なる火は祭司によって維持がなされていくが、その世話は聖なる火の聖性の高低に応じて定められた清浄度を達成した祭司以外はできない。その制度にもとづいて、聖なる火は現実には祭司を中心に構成される社会的組織であるパンタークをとおして共有され、その機能を果たしていることが明らかにされた。