著者
隈元 美貴子 柳田 元継 下野 勉
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.29-38, 2006

歯科診療は様々な不快な刺激によりストレスがかかる場面である。特に、子どもは苦痛を敏感に感じ、それを行動に示す。歯科診療時の恐怖感や不安感は痛みの閾値を下げ、治療を困難にさせ、悪循環を引き起こす。そのため、歯科医院では効果的なリラックス法を必要としている。リラックス法の一つである漸進的弛緩法は骨格筋の間歇的な緊張を通して、結果的に心身のリラックスを得る方法である。我々は筋肉の緊張と同様に脳の緊張が漸進的弛緩法に適用できるのではないかと仮説を立てた。これまでに脳に刺激をより強く与える可能性のある誘目性の高い図形の探索を行い、幾何学図形である三角形がその一つであることを見出した。そこで本研究では、なぜ三角形の誘目性が高いのかを明らかにするために、様々な形状の三角形を提示した時のラットの行動学的調査を行った。その結果、三角形のサイズや向きは図形提示部屋での滞在時間や注視時間に影響を与えなかった。次に、三角形を構成する線分の視覚走査回数を調べたところ、倒立三角形では右斜線を、正立三角形では左斜線をより多く注視した。このことは、斜線の誘目性が三角形における斜線の位置(左斜線か右斜線か)ではなく、角度(右上がり斜線か左上がり斜線か)に依存することを示唆する。そこで、斜線のみを提示した時の注視時間を調べたところ、ラットは右上がり斜線を左上がり斜線より長く注視した。これは右上がり斜線の誘目性が高いことを示す。この結果と円やフラクタル図形に右上がり斜線が含まれないことを考慮すると、三角形の高い誘目性が右上がり斜線の高い誘目性に起因することが示唆される。

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