著者
小野 英志
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.1-9, 2001

ピーター・ゲイが、ヴァイマール共和国を、あるいはそのモダニティを代表するもののひとつとして指摘したバウハウスは、1919年4月(ヴェルサイユ条約締結の2か月前)ヴァイマールに開校し、1933年8月(ナチス政権成立の7か月後)ベルリンで閉校した、造形Gestaltungの高等教育機関である。このバウハウスは1925年から30年にかけて、自らの名前を冠したバウハウス叢書Bauhausbucherを出版しているが、刊行された14巻の著者とタイトルは次のとおりである。1.ヴァルター・グロピウス.『国際建築』.1925.2.パウル・クレー.『教育スケッチブック』.1925.3.アドルフ・マイアー.『バウハウスの実験住宅』.1925.4.オスカー・シュレンマー編.『バウハウスの舞台』.1925.5.ピート・モンドリアン.『新しい造形』.1925.6.テオ・ファン・ドゥースブルク.『新しい造形芸術の基礎概念』.1925.7.ヴァルター・グロピウス.『バウハウス工房の新製品』.1925.8.ラスロ・モホリ=ナギ.『絵画、写真、映画』,1925.9,ヴァシリー・カンディンスキー.『点と線から面へ』.1926.10.J.J.P.アウト.『オランダの建築』.1926.11.カジミール・マレーヴィチ.『無対象の世界』.1927.12.ヴァルター・グロピウス.『デッサウのバウハウス建築』.1930.13.アルベール・グレーズ.『キュビズム』.1928.14.ラスロ・モホリ=ナギ.『材料から建築へ』.1929.このうちの8巻目、すなわちモホリ=ナギの『絵画、写真、映画』の刊行後に、出版元であるミュンヘンのアルベルト・ランゲン社Verlag Albert Langenから出された出版案内(プロスペクタス)には、9巻以降の続巻として、クルト・シュヴィッタースの『メルツ・ブッフ』、フィリッポ・トマソ・マリネッティの『未来主義』、トリスタン・ツァラの『ダダイズム』、ラヨシュ・カシャークとエルネー・カーライの『MAグループ』、テオ・ファン・ドゥースブルクの『デ・ステイル・グループ』、フリートリヒ・キースラーの『デモンストレイションの新しい形態』、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの『建築について』、ル・コルビュジエの『建築について』等々、30タイトル以上が予告されている。(この案内には11巻の著者マレーヴィチの名前はない。)実際に刊行されたものと、未刊に終わったものの著者名とタイトルとを併せて見れば、編者であるグロピウスとモホリ=ナギがこの時点でバウハウス叢書に-ひいては出版主体たるバウハウスという組織そのものに-どういう性格を与えようとしていたかがほの見えて興味深いものがあるが、しかし、この出版案内のなかでとりわけ目を引くのは、パリで活躍したアメリカ人作曲家ジョージ・アンタイルがバウハウス叢書『音楽機械Musico-mechanico』の著者として予告されていることではあるまいか。カンディンスキーはアルノルト・シェーンベルクにヴァイマールでの職を斡旋しようとしたと伝えられ、アメリカに渡ったモホリ=ナギはジョン・ケイジとその実験音楽に協力しようと努力し、またヨーゼフ・アルバースなどが参加したブラック・マウンテン・カレッジでは積極的に音楽がとりあげられた経緯がある.バウハウスの多くの教授陣が音楽舞台-の要素としての音楽だけではなく、いわゆるシリアス・ミュージックとしての音楽-に対して、造形および造形教育に深く関わるものとして注目していた可能性は否定しにくい.リベラル・アーツと称して音楽を備えるべき教養のひとつとみなしてきた伝統にあっては、バウハウスがことさら音楽を軽視したと考える方が不自然ではあるが、少なくともグロピウスとモホリ=ナギは、ここで見るようにバウハウス叢書という枠組みの中にアンタイルの著作を加え、さらにはハインリヒ・ヤコビによる『創造的音楽教育Schopferische Musikerziehung』をも加えようと企画している.一方で、バウハウスの周辺には、ヨーゼフ・マティアス・ハウアーのようにヨハネス・イッテンと協働すべく直接バウハウスの門を叩いた音楽家もいれば、バウハウス週間の演奏会に参加した音楽家も多い。本稿では、従来言及されることの少なかった、バウハウス関係者とアンタイルなどの同時代の作曲家たちの接触を通して、作曲家ないし音楽とバウハウスがどのような関係を維持していたのかについての考察-ひいてはバウハウスを機能主義のチャンピオンとみなす視点を転換するためのひとつの契機に関する作業-の緒を研究ノートとして記しておきたい。
著者
伴 みずほ
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.1-8, 2011-12-15

本研究では、小麦アレルギーのための小麦の代替として米粉の特性を活かした調理が簡単な離乳食のレシピ開発を試みた。小麦粉のでんぷんは、離乳食にヨーグルト様の濃度(とろみ)をつけるが、この小麦粉の特性は米粉により代替できた。この米粉の性質は生後5、6ヶ月頃の離乳食の調理形態に適しており、米粉は離乳食に十分活用できると考えられる。また調理温度を下げるとアイスクリームにも応用できた。主として小麦粉のグルテンによる特性、すなわち粘弾性、伸展性、可塑性は、米粉に副材料を加えることで代替できた。これを利用してバナナや肉団子様の固さをもつ代替え離乳食のレシピも開発した。しゅうまいやクレープの代替食のレシピは、生後9ヶ月以降の乳児の歯ぐきでつぶせる/噛める固さの離乳食の調理形態に対応している。これらのレシピは簡単なため、子ども料理教室等の食教育にも利用できる。
著者
隈元 美貴子 柳田 元継 下野 勉
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.29-38, 2006

歯科診療は様々な不快な刺激によりストレスがかかる場面である。特に、子どもは苦痛を敏感に感じ、それを行動に示す。歯科診療時の恐怖感や不安感は痛みの閾値を下げ、治療を困難にさせ、悪循環を引き起こす。そのため、歯科医院では効果的なリラックス法を必要としている。リラックス法の一つである漸進的弛緩法は骨格筋の間歇的な緊張を通して、結果的に心身のリラックスを得る方法である。我々は筋肉の緊張と同様に脳の緊張が漸進的弛緩法に適用できるのではないかと仮説を立てた。これまでに脳に刺激をより強く与える可能性のある誘目性の高い図形の探索を行い、幾何学図形である三角形がその一つであることを見出した。そこで本研究では、なぜ三角形の誘目性が高いのかを明らかにするために、様々な形状の三角形を提示した時のラットの行動学的調査を行った。その結果、三角形のサイズや向きは図形提示部屋での滞在時間や注視時間に影響を与えなかった。次に、三角形を構成する線分の視覚走査回数を調べたところ、倒立三角形では右斜線を、正立三角形では左斜線をより多く注視した。このことは、斜線の誘目性が三角形における斜線の位置(左斜線か右斜線か)ではなく、角度(右上がり斜線か左上がり斜線か)に依存することを示唆する。そこで、斜線のみを提示した時の注視時間を調べたところ、ラットは右上がり斜線を左上がり斜線より長く注視した。これは右上がり斜線の誘目性が高いことを示す。この結果と円やフラクタル図形に右上がり斜線が含まれないことを考慮すると、三角形の高い誘目性が右上がり斜線の高い誘目性に起因することが示唆される。
著者
関 三雄
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.21-35, 2004

俗悪とは解放だ。つまり悪趣味を恐れないこと、立派な人間だと思われたいという欲求に打ち勝つことなんだ。
著者
中川 淳子 川田 尚鋪
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.91-95, 2002

本学の一般学生(食物栄養学科2年次生)と運動部(バレーボール部)所属学生について身体状況調査、身体機能調査、生活時間調査を行い以下の結果を得た。1)身体状況調査では運動部所属学生の身長が一般学生のそれより有意に高かったが体重、BMIについては有意の差は無かった。また、一般学生の身体は全国の平均値と同じであった。2)身体機能調査では筋力では握力には有意差は認められなかったが、背筋力では運動部所属学生の方が有意に高かった。そして、身体の柔軟度を示す体前屈では運動部所属学生の方が柔軟性が高かった。また、運動部所属の学生は一般学生に比べ安静時脈拍が低値を示し、運動負荷による脈拍充進からの回復が速やかであることがわかった。全身の持久性能力のよい指標となる最大酸素摂取量については運動部所属学生の方が一般学生より格段に良好な高値を示した。3)5日間の生活時間調査によって得られた生活活動指数では運動部所属学生の方が一般学生より高く、活発に活動しており、その分睡眠時間は運動部学生の方が長くなっている。このようなメリハリのある生活内容が最大酸素摂取量の良好な数値、すなわち全身持久力の高い身体を形成するのに寄与しているものと考えられる。4)これらのことから、生活習慣病の予防だけでなく健康の保持・増進のためにも日々の生活に運動を取り入れ、それを習慣化するよう心がけることの大切さが強く示唆された。