- 著者
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富田 英典
- 出版者
- 佛教大学
- 雑誌
- 社会学部論集 (ISSN:09189424)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, pp.49-64, 1997-03-01
- 被引用文献数
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近年,通信メディアの発達には目を見張るものがある。本稿では,移動体通信メディアの発達が,都市空間においてどのような人間関係を生みだそうとしているかについて考察する。まず,携帯電話やPHS,ポケットベルも含めた移動体通信メディアが,現代人の中にどのような欲望を生み出そうとしているのかについて,非同期コミュニケーションメディア(電子メール・ボイスメール・ファックス)に関するマーカスらの調査研究を紹介しながら研究する。「いつでも,どこでも」自由に会話ができるはずのこれらの通信メディアの特質は,受信する側にとっては,逆に自由を奪うメディアにもなりうる。マーカスらが明らかにした「自分の好みに合わせて送受信したい」という願望は,在宅中でも留守番電話機能を利用したり,携帯電話やPHSでの留守番電話機能の利用に現れている。本稿では,このような電話コミュニケーションを「居留守番電話型コミュニケーション」と呼ぶ。他方で,都市空間を舞台に利用される携帯電話やPHSやポケットベルは,外出中でも友人と連絡が取れ,都市空間をより自由に楽しむことを可能にしてくれる。同時に,これらのメディアは,匿名牲のメディア・コミュニケーションを可能にする。NTTのダイヤルQ2を利用した「ツーショット」番組やポケットベルの「ベル友」などは,匿名のストレンジャーとの間に親密な関係を成立させ始めている。本稿では,このような他者をIntimate Strangerと呼び\匿名性の中に新しい親密性が成立する可能性を示す。