著者
村瀬 敬子
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-19, 2010-09-01

戦前・戦時期において国民教化メディアであったラジオは,女性の社会教育を目的とした「婦人・家庭向け」の番組を放送していた。本稿では「婦人・家庭向け」の番組のうち,料理放送に注目し,1930年代を中心に,ラジオが視聴者としての女性,なかでも「主婦」とどのような関係をとり結んでいったのかを明らかにした。「料理献立」は都市部に居住する一定以上の階層の「主婦」に向けて,料理の調理法をほぼ毎日,放送する番組であった。番組には栄養や味や家計等に配慮して,毎日異なる副食を家族に提供すべきだとする近代的な家事規範が織りこまれており,その背景には料理を「教養」としてとらえる文化があったといえる。一方で聴取者調査や番組にかかわる言説の分析からは,「料理献立」が,近代的な主婦へと女性を「統合」するだけでなく,階層や地域などの差を顕在化させる,いわば「分断」の契機をもはらんでいたことがわかった。それにも関わらず,日々の料理放送が1941年まで継続した背景を,戦時期における「栄養」と「団攣」という観点から考察した。
著者
松田 智子
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.50, pp.85-99, 2010-03

本稿の目的は,DV被害の実態と構造を概観した上で,DV被害者支援の現状について検討を行い,今後の対策の課題について明らかにすることである。本稿では第1に,2008年度の全国調査をもとにDVの実態を明らかにしたが,前回の2004年度の調査と比較して数値の変動の幅は小さく,DVが社会全般に広がりをもつ深刻な問題であることが改めて明らかになった。第2に,DVが生み出される構造についてイデオロギー,社会構造,プロセス,リスク要因の4つの次元から再整理を行った。第3に,DV被害者をめぐる支援体制について,法的な対応,警察の対応,地方自治体の取組を中心にその現状と課題について検討を行った。「配偶者暴力防止法」の成立は,「法は家庭に入らず」原則を打破した画期的なものであり,その後の2度の改正によって,DVの防止と被害者の保護の具体的内容が強化されてきた。しかし被害者支援の多くは対症療法的であり,質・量ともに更なる支援体制の強化が求められる。DVの実態DVの構造配偶者暴力防止法保護命令制度配偶者暴力相談支援センター
著者
池本 美和子
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-16, 2003-09

近年,福祉国家の再構築をめぐる論議が進む中で,その基本原理である社会連帯に注目する動きがみられる。基礎構造改革の理念にも社会連帯に基づく支援が掲げられているが,その分析は充分とはいえない。かつて19世紀末から20世紀の初頭にフランスでは社会連帯主義が提唱され,日本でも一時期,社会事業を支える思想として注目されたことがある。その際に,道徳的規範として浸透が図られるという特徴をもっていたが,今日の論議はその影響を払拭したとはいえない状況にある。道徳的規範を超えて,法規範としてどう論議を深めていくかが問われている。あらためて,過去のあゆみを振り返りながら,個人の自由のための連帯を権利として位置づけ,それにむけた国家の責任を求めていくという方向が必要である。社会連帯社会保障法福祉国家論基礎構造改革法的規範
著者
山本 奈生
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.62, pp.75-91, 2016-03

本稿は2015年の「安全保障関連法案」に対する市民的不服従の社会運動,とりわけ学生を主体としたSEALDsについて論ずるものである。本稿ではまず第一にSEALDsが組織性や中心点をもたない緩やかな「立憲主義」への呼びかけである点を描写し,第二に当該運動の表面的な訴えのフレーミングおよび参与者らによる複数の言説について論述する。その上で,SEALDsに対して投げかけられた運動体内外からの批判を詳説し,社会運動とナショナリズムの問題やポスト植民地主義的観点からの批判について検討する。そして,参加者諸個人の水準においては,既にそのような批判が内在的に検討されているのにもかかわらず,ムーヴメントの表面的な言説水準においてはナショナリズム論やポスト植民地主義論の観点からみると素朴に映ずる主張が採用されている問題を中心に考察する。安全保障関連法案集団的自衛権新しい社会運動SEALDs
著者
藤井 透
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.61, pp.35-55, 2015-09

本稿は,19 世紀後半のイギリスの経済学者であるアーノルド・トインビー(1852-1883)に関する,従来の諸外国の研究をサーベーして,次のようなことを論じた。トインビーに関する研究は,その死から両大戦間期まで,第二次大戦後から1970 年代まで,1980 年代,そして,その後から現代までと,おおまかに四つの時期に分けることができる。そして,本稿は,それぞれの時期を,トインビー「神話」の誕生,「神話」から研究へ,研究の深化と発展,あたらしい「神話」か?と特徴づけた。結論として,トインビーに関するもっとも豊かな研究成果が現れたのが1980 年代で,それを部分的に受け入れて,トインビー個人ではなく,かれの『産業革命』を現代イギリス研究にとって重要なテキストであるとみなしているのが,今日の研究の特徴だとした。アーノルド・トインビー歴史学派経済学産業革命オックスフォード大学
著者
大藪 俊志
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.69, pp.17-32, 2019-09-01

本稿の目的は,国家機能の拡大に伴う行政活動の変化の様相を概観したうえで,行政活動を見直す取組み(行政改革)の特徴を考察することにある。現代国家の性格が「福祉国家」「行政国家」と呼ばれるものに変化するなかで,行政の活動領域は急速に拡大していった。その後,肥大化した行政活動は様々な課題を抱えるようになり,1980年代以降,先進国では行政のあり方を見直し,効率化と公共サービスの質の向上を目指す様々な改革手法(NPM など)を導入するようになった。これまでに先進国が実行してきた行政改革は,各国における統治構造の見直しと関連するパブリック・ガバナンスの改革と捉えられるものであり,(1)行政が効率性,柔軟性や透明性を意識するようになり,顧客(市民)志向を強めたこと,(2)行政改革の取組みでは,行政を一国のガバナンス構造の枠組みの中に位置づけ,全政府的(whole-of-government)なアプローチを必要とすること,(3)行政改革は社会経済の変化に対応し続けなければならないため継続的な取組みとなること,などの教訓が得られている。福祉国家行政国家行政改革パブリック・ガバナンス
著者
富田 英典
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.49-64, 1997-03-01
被引用文献数
1

近年,通信メディアの発達には目を見張るものがある。本稿では,移動体通信メディアの発達が,都市空間においてどのような人間関係を生みだそうとしているかについて考察する。まず,携帯電話やPHS,ポケットベルも含めた移動体通信メディアが,現代人の中にどのような欲望を生み出そうとしているのかについて,非同期コミュニケーションメディア(電子メール・ボイスメール・ファックス)に関するマーカスらの調査研究を紹介しながら研究する。「いつでも,どこでも」自由に会話ができるはずのこれらの通信メディアの特質は,受信する側にとっては,逆に自由を奪うメディアにもなりうる。マーカスらが明らかにした「自分の好みに合わせて送受信したい」という願望は,在宅中でも留守番電話機能を利用したり,携帯電話やPHSでの留守番電話機能の利用に現れている。本稿では,このような電話コミュニケーションを「居留守番電話型コミュニケーション」と呼ぶ。他方で,都市空間を舞台に利用される携帯電話やPHSやポケットベルは,外出中でも友人と連絡が取れ,都市空間をより自由に楽しむことを可能にしてくれる。同時に,これらのメディアは,匿名牲のメディア・コミュニケーションを可能にする。NTTのダイヤルQ2を利用した「ツーショット」番組やポケットベルの「ベル友」などは,匿名のストレンジャーとの間に親密な関係を成立させ始めている。本稿では,このような他者をIntimate Strangerと呼び\匿名性の中に新しい親密性が成立する可能性を示す。
著者
千葉 芳夫
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.17-31, 1999-03-01

ヴェーバーは、近代化や合理化を全面的に肯定したわけではなかった。彼の議論には、西欧の近代や合理性に対する批判も明らかに見られるのである。近年、ヴェーパーの近代批判の側面に焦点をあてた解釈が多く現れてきている。そこで議論の一つの中心をなしているのは、ヴェーパーとニーチェの関係である。本稿では、わが国におけるこの問題についての代表的論者である山之内靖のヴェーパー解釈を中心に、ヴェーパーとニーチェをめぐる議論を検討することにする。
著者
丸山 哲央 山本 奈生
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.17-31, 2010-03-01

社会学や人類学における文化理論では,宗教は文化の普遍的項目あるいは普遍的類型(universal pattern)として扱われてきた。しかし,文化のグローバル化との関連で宗教に言及する場合,宗教の包括的な定義をもってしては,そのグローバル化の実態を捉えることは困難である。なぜなら,グローバルなレベルでの宗教的実践が周知の事実として確認されると同時に,宗教の本質には身体性と地域性という時間・空間に規定されたローカルな実存的(existential)要素が不可欠なものとして含まれている。本稿では,世界宗教とされる仏教のグローバル化について,特に浄土宗の布教活動である海外開教を事例として取り上げ,その理論的分析方法について考察する。この際に,仏教の教義,教理を含む文化の認知的および評価的要素とともに,具体的な宗教的実践にかかわる実存的要素と宗教芸術や娯楽的行事(仏教の「花まつり」等)を捉えるための表出的要素とを分析概念として設定することの有効性が確認された。
著者
朴 光駿 呉 英蘭
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.63-78, 2006-09-01

この研究は1987年成立した韓国の男女雇用平等法の成立過程を,社会統制理論の観点から分析し,同法律成立の政治過程を明らかにするとともに,その法律の成立過程に対する社会統制理論の説明可能性と限界を明らかにすることをその目的としている。社会統制理論そのものについても,その発展と内容,限界や批判,そして適用上の問題などを中心に,多少詳しく紹介している。研究方法は文献研究とともに,当時の男女雇用平等法案づくりに携わっていた担当者に対する面談調査が併用された。男女雇用平等法の形成過程については,主につぎの3点を中心に分析された;(1)その立法化が女性団体の立法要求に対する政府の反応であったのか,(2)政府,与党からみた政治的状況は,女性有権者を政治的に包摂する必要に迫られていたものなのか,(3)実際成立した法律の内容は,事前に計画されたものなのか,それとも予期されなかったものであったのか。研究結果は次のようにまとめられる;(1)男女雇用平等法は1980年代後半から成長してきた女性運動の組織化がその背景にあり,それは立法化の重要な圧力になっていた,(2)同法の立法化論議の時期は,総選挙と大統領選挙の時期と一致していて,その重要な目的は女性有権者の政治的動員であった,(3)実際に成立された同法律の内容は必ずしも女性団体の要求が反映されたものではない。平等法成立における女性包摂も女性平等労働権保障より既存の統治権維持を優先視し,核心的な政策決定に関する女性側の提案は受け入れられていない。
著者
山口 洋
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.39, pp.151-159, 2004-09
被引用文献数
1

選択肢の順序効果は調査論で古くから知られているが,種々の効果を生み出す原因や条件の体系的研究は比較的最近まで不在だった。しかし近年,調査論への認知科学的接近の隆盛により,選択肢の順序効果の研究も体系化されてきた。本稿はその成果を要約し,今後の課題を示した。すなわち選択肢の順序効果は(1)順番「そのもの」の効果と,(2)先行する選択肢の内容の効果に分けられ,(1)についてはリストの視覚的提示により初頭効果が,聴覚的提示により新近性効果が起きやすく,(2)については極端な評価を受ける選択肢があると,その後の選択肢で対比効果が生じやすいとされる。今後の課題としては,より周到な実験デザインで,(1)(2)の効果を分離することである。選択肢の順序効果初頭効果新近性効果対比効果
著者
瀧本 佳史 青木 康容
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.51-67, 2013-09-01

沖縄県は都道府県の中でもっとも地籍調査が進んでおりその進捗率はほぼ100%にも達するという。その理由は先の戦争に起因するところが大きい。本稿は沖縄県の地籍調査が戦後の米軍基地化によって一層困難になりながらも,1972 年の日本復帰以前と以後においてどのように取り組まれてきたのかを示すと共に,なお土地所有関係が確定しない境界不明土地がどのように地域的に偏在しているのか,それによってどのような地域問題を抱えることになったのかなどについて説明する。それによって,進捗率が高いことが必ずしも土地問題を解決したわけではないことが明らかになるだろう。
著者
村瀬 敬子
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.71, pp.47-66, 2020-09

本稿の目的は1950年代後半から60年代前半を代表する料理研究家であった江上トミを文化仲介者と位置づけ,家庭料理とジェンダーの結びつきという観点からその表象を分析した。特に階層文化のあり方に注目し,主婦自らが料理を作るべきだとする規範(「手づくり規範」と呼ぶ)の強さの背景にどのような理由があるのかを考察した。江上トミ(1899-1980)は初期のテレビの料理番組に出演し,多くの料理にかかわる本にかかわり,料理学校の経営も行っていた料理研究家である。その特徴あるアピアランス(外見やキャラクター)や良妻賢母と料理を結びつけた言説によって,「理想の母」というイメージを持ちながら,幅広い活動によって有名性を獲得していた。「理想の母」としての江上トミのイメージは二つの「知」によって支えられている。ひとつは料理研究家としての正統性を象徴する〈高級文化〉としての「世界の料理」であり,もうひとつは地方名家の母から娘への「伝承」である。江上トミにおける両者の結合は,「世界の料理」を女性が「手づくり」することが「階層の表現」ともなる文化を生み出した。こうしたことから,本稿では,家庭料理の「手づくり規範」の背後には「手づくり」を「愛情の表現」とするだけでなく,「階層の表現」ともする二重の意味づけがあることを指摘し,この二重性によって,主婦自らが料理を作ることに強い規範性があるのではないかと考察した。料理研究家江上トミ文化仲介者手づくり規範階層
著者
高橋 伸一
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.52, pp.85-98, 2011-03

本稿でとりあげる小島勝治は1914年に大阪市で生まれ,1944年には外地で戦病死する。その短い生涯において,民俗学,統計学,社会事業論の分野で優れた業績を顕した小島の仕事ぶりは,圧巻という以外にない。小島の研究は,彼の友人たちによって『日本統計文化史序説』(未来社,1972年),『統計文化論集』I-IV(未来社,1981-1985年)の5冊にまとめられ刊行されている。民俗学・郷土史,統計学,社会事業論の幅広い領域をカバーする小島の研究情熱はある意味で異常である。その異常の背景にあるものを小島が残した手記や日記,手紙等の生活史資料から浮かび上がらせたい。小島勝治統計文化民俗学
著者
星 明
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.64, pp.1-23, 2017-03-01

本稿は,中国の社会学界がマルクス主義社会学をどのように受容し,どのように展開させてきたかを,清末期,民国期,新中国成立後の百花斉放・百家争鳴期と反右派闘争期,そして社会学の中断期と回復期といった歴史区分ないしエポックと関連させて考察したものである。民国期に,なんにんかの社会革命家,言論人,知識人らがマルクス主義を国家の変革,構築のための考え方と行動の基礎にするために取り入れたが,それにはマルクス主義社会学も一定の寄与をした。そしてマルクス主義社会学はブルジョア社会学に対して劣勢ながらももう一方の学派として流布した。しかし,新中国成立8年後の反右派闘争期(1957)にはマルクス主義社会学も含めすべての社会学は1979年までタブーになった。その理由は,社会学は資本主義社会のブルジョア思想をもつ学問であると判断したからである。1979年3月の社会学の回復,復権,再建にあたって,史的唯物論と社会学との関係について,多くの社会学者の論争を経て,社会学界として一定の理論的結論をだし,社会学に携わることの恐れや社会学のタブー視を撤廃し,社会学の再建を加速させた。この小論は,うえの内容を関連資料(可能な限り一次資料)に基づいて論じたものである。マルクス主義社会学史的唯物論ブルジョア社会学中国社会学史反右派闘争
著者
河内 良彰
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 = Journal of the Faculty of Sociology (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.72, pp.21-40, 2021-03

本研究は,コロナ禍における大学生の旅行意欲と観光行動を把握するために,佛教大学の学生を対象にアンケート調査を実施し,コロナ下の感染対策と観光復興に寄与することを目的とした。分析の結果,以下8点が明らかとなった。第1に,回答者の過半数は旅行意欲がなく,その理由として「感染する可能性があるから」が最多を占めた。第2に,旅行意欲が高まる要素は,「ワクチンが開発されたら」が最も多かった。第3に,関心のある観光要素は,「自然・景勝」が第1位をとった。第4に,なるべく避けたい交通手段は「長距離バス」,感染予防のために重視する要素は「マスク」が,それぞれ第1位に立った。第5に,「Go To トラベル」キャンペーンで行きたい観光地は,「北海道」が第1位,「沖縄」が第2位,「福岡」が第3位となった。第6に,「マイクロツーリズム」との関連で,京都観光で行ってみたい観光地は,「嵐山」が第1位,「清水寺」が第2位,「天橋立」が第3位となった。第7に,タイプ別観光への関心について「ある」とした回答は,「マイクロツーリズム」が30%となり,海外旅行(41%)をも下回った。最後に,女性のほうが国内旅行(日帰り)やマイクロツーリズムへの関心が高く,学年別で見ると,4年は国内旅行(日帰り),国内旅行(宿泊),マイクロツーリズムへの関心のいずれも比較的高くなった。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)旅行意欲観光行動Go To トラベルマイクロツーリズム
著者
満田 久義 Mulyanto Harahap H.S. Rizki M. Syahrizal B.M. Yudhanto D.
出版者
佛教大学社会学部
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-15, 2010-03

本稿は,2005年にマラリア・アウトブレイクの発生したインドネシア東ロンボク島で実施したマラリア血液検査データとマラリアに関する住民意識と行動の社会疫学調査(CBDESS,2006)のデータを解析し,マラリア・アウトブレイクの因果関係を実証的に明らかにしようとするものである。2005年の東ロンボク島アウトブレイクは,NTB州政府報告によると,1443名の罹患者と14名の死亡が公式確認され,その75.2%は熱帯熱マラリアであった。マラリア蔓延の発生源は,Korleko地区の石灰工場の労働者だと推測されている。同島では,マラリア・アウトブレイクはこれまでも頻発していたが,2005年の場合は,ほとんどコントロールが利かず,いくつかの地区では,医療体制の崩壊に襲われた。さらに,この石灰工場の多くの労働者は,地方からの出稼ぎ労働者であったために,マラリア発生源として帰郷し,このことが従来は全くのマラリアフリーだった山間僻地における新たなマラリア感染拡大の原因となった。本研究では,マラリア感染率(AMI)を被説明変数とし,98の社会学的変数を説明変数として用いて,マラリア感染拡大の地域間比較分析をする。その分析結果によると,マラリア感染は経済貧困と教育問題,とくにマラリア教育の不足が顕著な要因であることが分かった。マラリア対策に関連して,抗マラリア薬の耐性問題や媒介生物のハマダラ蚊駆除の困難性のほかに,マラリア教育に関する社会的解決の重要性についても議論を深めている。マラリア・アウトブレイクインドネシア・ロンボク島社会疫学調査
著者
野崎 敏郎
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.105-121, 1998-03-02

ヴェーパーの論じた資本主義の精神は,成熟した資本主義に適合的な精神ではなく,資本主義を創出する起動力となった精神であった。その精神においては,倫理と営利とが内的に不可分に媒介しあっており,そうした特殊な倫理規範に支えられた営利活動を展開したのは中産的生産者層のみであった。だからこそイギリスで産業革命が開始されることになった。幕末維新期の日本においては,そうした精神をもつことなく,(1)封建的関係意識と功利主義との混在(2)目的志向的倫理観の立身出世主義への転換(3)大衆的規模における知的水準の向上という独特の精神文化が出現することによって,日本的資本主義への道が拓かれることになった。