著者
野崎 敏郎
出版者
佛教大学
雑誌
社会学部論集 (ISSN:09189424)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.105-121, 1998-03-02

ヴェーパーの論じた資本主義の精神は,成熟した資本主義に適合的な精神ではなく,資本主義を創出する起動力となった精神であった。その精神においては,倫理と営利とが内的に不可分に媒介しあっており,そうした特殊な倫理規範に支えられた営利活動を展開したのは中産的生産者層のみであった。だからこそイギリスで産業革命が開始されることになった。幕末維新期の日本においては,そうした精神をもつことなく,(1)封建的関係意識と功利主義との混在(2)目的志向的倫理観の立身出世主義への転換(3)大衆的規模における知的水準の向上という独特の精神文化が出現することによって,日本的資本主義への道が拓かれることになった。

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"通俗的な日本論・日本人論にあっては,日本人の歴史性や日本国内の階層差を顧みず,また特殊な事例をあたかも一般的傾向を代表するものであるかのように装うことがある""浅見定雄が痛烈な批判を" →註より

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