- 著者
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伊藤 千恵
藤原 一繪
- 出版者
- 日本生態学会
- 雑誌
- 保全生態学研究 (ISSN:13424327)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.143-150, 2007-11-30
- 被引用文献数
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トウネズミモチは、中国原産の外来種で、街路樹などに植樹されてきたが、その後植栽地から逸出し分布拡大している。また、都市域の森林群落ではトウネズミモチの実生個体が多く、将来群生地を形成する可能性のある種である。そのため、生活形の似ている常緑小高木で同属在来種のネズミモチとの比較から、トウネズミモチの侵入の実態をとらえ、生態学的特性を解明するため、都市域森林群落における生育地、種子散布特性、発芽特性、初期生存率についての調査・実験を行った。調査の結果、トウネズミモチはネズミモチに比べ小さな果実(長径:6.55±0.68mm、短径:5.53±0.55mm)を多数つけており、ヒヨドリ、メジロ、シジュウカラなど205個体(総観察時間22.5時間)の採餌が確認でき、ネズミモチに比べ果実採餌鳥類種数、個体数ともに多く観察され、多数の種子が鳥類により野外に散布されていると考えられる。トウネズミモチの発芽は、光条件の影響を受けないことが示されたため、森林群落の林床においても発芽可能であると考えられる。一方、実生の生存率は林内(相対光量子束密度4.1%)と林縁(相対光量子束密度16.4%)で有意な違いがみられた。また、トウネズミモチはロジスティック回帰分析の結果、相対光量子束密度6.3%以上で出現頻度が50%(コドラート面積25m^2)を超えることを示した。DBHも相対光量子束密度と正の相関が得られた。トウネズミモチの出現、成長には、光量が重要な要因としてかかわっていたことから、トウネズミモチは実生の成長段階において光要求性の高い種であることが示された。すなわち、閉鎖林冠下などの光条件が悪い場所では成長の段階で枯死する可能性が高く、新たな定着は難しいと考えられる。一方、実生の生存率が高い光条件が良好な場所では、高い定着率であることが予想され、実生は成木へと成長していくことが十分に可能であり、今後新たに個体数が増加する可能性が考えられる。