- 著者
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中根 允文
- 出版者
- 長崎国際大学
- 雑誌
- 長崎国際大学論叢 (ISSN:13464094)
- 巻号頁・発行日
- vol.7, pp.205-212, 2007
いま、長崎県における精神科医療の展開に関する歴史を、長崎大学医学部精神神経科学教室の初代教授である石田昇の成果を中心に振り返りつつある。完成させるには今しばらくの情報収集が必要であり、その途中経過として、ここには研究ノートの形で紹介してみたい。現在、長崎県下には39ケ所の精神科病院があり、総数で8,415ベッドが精神科疾患の患者のために準備されていて、入院患者数は7,059人である(図1)。彼等の平均入院日数は440.9日(図2)であり、利用率は83.5%(図3)になっている(いずれも、平成14年6月末現在のデータ)。長崎県の人口と比較したとき、ベッド数は万対55.2床(図4)、入院数は万対51.7人となる。全国の動向と比較したとき、全国でベッド数が万対28.0床、万対在院患者数が26.0人、そして平均日数は364日であり、いずれもその数値が大きく全国を上まっている。医療全体に関わる統計データで、西日本地区が東日本に比して全体的に高い数値をみており(病院数・病床数が多い、個人当たりの医療費が高いなど)、精神科医療では更にその傾向が顕著である。しかし、長崎は同傾向が更に著しくなっているのである。いつの頃から、このような傾向が目立ってきたのであろうか。長崎の精神科医療に関するハードの面が充実していること自体は歓迎すべきであろうが、実際はその内容が問われるべきであることも事実である。ここでは、長崎県における精神科医療の全般について広く言及するゆとりはなく、まずはその展開に大きく寄与した故石田昇教授の足跡をたどりながら、若干の考察を試みてみたい。