著者
秋山 雅彦
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.5-15, 2008
参考文献数
52
被引用文献数
6

最終間氷期は,エーム期および深海底堆積物層序のMIS 5eと同時期を示す用語とされることが多い.しかし,エーム期は後期更新世の開始期として国際的な標準層序に位置づけ13.1万年前〜11.6万年前と定義し,最終間氷期については12.5万年前にヨーロッパにおける樹木花粉が卓越することで特徴付けられる温暖期とすることが望ましい.IPCCによる今世紀末の気温上昇の予測は,循環型社会シナリオとされるB1シナリオでも,1.1〜2.9℃とされ,放射強制力の変化は0.6〜2.4W/m2とされている.最終間氷期の気温上昇の直接的原因は地球軌道の変化による放射強制力の増加で,全地球平均の上昇値は僅かに0.2W/m2とされているが,北極地域の夏の時期ではその値は60W/m2に及ぶ.このことによる最終間氷期の気候変動はきわめて大きく,それに伴う海面上昇も大きかったことが分かっている.近年の急激な気温や海水面の上昇はこれまで人類が経験したことのないほど急激な現象であると報道されることが多い.しかし,最終間氷期の気候変動が現在のそれを越える規模であったことを考えると,産業革命以降になって化石燃料の燃焼による人為的な要因と区別して,自然要因の解明を行うことが是非とも必要になろう.

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