著者
Masengi Kawilarang W.Alex 柴田 恵司
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.203-211, 1990
被引用文献数
1

東南アジヤ諸島部の在来型漁船(アウトリガー・カヌー)は,その両舷にアウトリガー浮木を備え,この地域における漁業の主力である。しかし,近年における推進機関の導入,あるいは,造船用材となる森林資源の減少などに伴って,その船型が変わりつつある。そこで本研究では,これらカヌーの現状,特に船型を正確に記録保存すると同時に,周辺地域における様々な小型漁船を,主要寸法と線図から求めた満載時船型諸元によって比較することにある。このため,縮尺率1/4の木製パソトグラフによって船体線図作成のための直接計測をスラゥエッシで,カヌー,20隻,西マレーシヤ東岸で,アウトリガー無しの在来型構造船6隻,さらに,沖縄県下のサバニ,6隻を計測した。そのほか,パプア・ニュー・ギニヤ(PNG)と,フィリッピンのカヌー,和船のほか,日本の近代的な小型漁船の資料を併せた合計52隻を比較検討し,東南アジヤ諸島部のカヌーの船型の特長を明らかにしようとした。これらのカヌーは,丸木作りの船底構造部の上に狭い板を積み重ねた準構造船が主で,丸木船も含まれる。その船体は,満載喫水におけるL/B=12と極めてスリムであり,その幅は,地域平均で,43〜53センチと著しく狭く,その横復元力は,全長より短い竹のアウトリガーで支えられている。また,船体はほとんど船首尾同型であるため,浮面心,浮心の前後位置は,ほぼ船体の中央にある。これらが,カヌーの特長である。なお,フィリッピンとスラゥエッシのカヌーとは船型的に近い関係にあるが,PNGのカヌーを除く,他のいずれの船とも,明らかに異なっている。

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