著者
後藤 正英
出版者
同志社大学
雑誌
一神教学際研究 (ISSN:18801072)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.79-100, 2007

現在のEUの移民問題をめぐる研究においては、移民を排除しようとする人々の間で、かつてのような人種主義的・民族主義的な排外主義ではなくて、いわば「啓蒙主義的排外主義」と呼びうる現象が見られることが指摘されている。つまり、現在の移民反対論者たちは、リベラルな価値観を前提にした上で、それゆえに、リベラルな価値観を受容しない人々(男女の平等、政教分離、表現の自由を理解しようとしないイスラーム教徒たち)を排除しようとするのである。リベラリズムによる宗教批判は、かつては、近代ヨーロッパのユダヤ人たちが直面した問題であった。ヨーロッパのリベラルな知識人たちは、ユダヤ人への市民権授与には積極的であったが、そのリベラリズムのゆえに、ユダヤ教については否定的な態度をとったのである。このようなユダヤ教批判に対抗して、近代ユダヤ教の父として知られるモーゼス・メンデルスゾーンは、市民的地位における平等とユダヤ教の伝統を維持することが両立可能であることを主張しようとした。彼は、法的平等を獲得する条件としてユダヤ教の内容上の変更を求めてくるような要求には徹底して反対の立場を取った。

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編集者: Greenland4
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